2012 Fiscal Year Research-status Report
ファジィ双線形システムに対する制御系設計と実システムへの応用
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23500287
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
米山 淳 青山学院大学, 理工学部, 教授 (30283344)
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Keywords | ファジィシステム / 非線形システム / 制御系設計 |
Research Abstract |
ファジィ双線形システムに対し、出力フィードバック則による制御系の設計を行った。ファジィ双線形システムとは、局所的には双線形システムで表現される非線形システムである。従来高木・菅野ファジィシステムは局所的には線形システムであったが、双線形システムで表現することにより、広いクラスの非線形システムを表現できる。基本的な設計方法としては、フィルタと状態フィードバック則を組み合わせる方法がある。まずフィルタの設計法を確立し、フィルタと状態フィードバック則を合わせることで、出力フィードバック則を設計することができた。この際に組み合わせる状態フィードバック則は、新たに提案する非線形な制御則であった。この制御則により、従来は困難とされてきたファジィ双線形システムの制御系設計が可能となった。もし前件部変数が未知の場合には、分離定理が成り立たないため、フィルタと状態フィードバック則を同時に設計することを考える。ここでは、フィルタの導出で行った方法と同様に、前件部変数を同時に推定する出力フィードバック則を設計した。さらに、出力フィードバック則の設計条件を緩和する設計条件を求め、汎用性の高い制御系の設計方法を確立した。設計する制御則の種類も、安定化出力フィードバック則のみならず、むだ時間を含んだファジィ双線形システムに対する制御則や、システムパラメータに同定誤差を含んだファジィシステムに対するロバスト制御則の設計も行った。 さらに、新たに局所的に非線形システムで表されるファジィシステムも考察した。このファジィシステム表現により、さらに広いクラスの非線形システムが表現できた。またこのシステムに基づいた制御系設計の方法も与えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画通りに進んでおり、安定化制御設計問題に対しては制御系設計の手法を提案できている。また、システムにむだ時間を含んだむだ時間システムや、システムにモデル化誤差を含んだ不確かなシステムに対しても、安定化制御系設計法を与えた。これらの制御設計手法においては、保守性を軽減し解が得られやすい設計条件の提案も行った。実際、これまでの研究結果と比較しても、設計条件が緩和され、よりよい制御系が設計できることが示された。 さらに、新たな形式の制御則の設計法を提案した。対象システムは局所的に双線形システムのため、これまでの研究においては制御則もある特殊な非線形な制御則が提案されていた。ここでは、閉ループシステムが局所的には線形システムとなるような、非線形な制御則を新たに提案した。つまり、フィードバック制御により局所的には線形システムとなる手法を見つけた。この制御手法においては、従来の制御則設計よりも設計条件が緩和されるため、簡素な条件式を解くことで設計できるという利点がある。さらに、このフィードバック制御則の考えにより、局所的にはより複雑な非線形システムであるファジィシステムに対しても同様な制御則を用いて制御系設計が行えることを証明した。これは、連続時間システムに対してのみならず、離散時間システムに対しても制御系設計を行える。これらの点に関しては、計画以上に研究が進んでいると考えられる。 しかし、当初、予定していたシステムに外乱が混入した場合の外乱抑制制御則の設計手法は少し遅れている。外乱抑制制御則も安定化制御則と同様な考えにより設計が行えると予定していたが、設計条件が複雑になることが分かった。そのため、最終的な結果までには至っていないが、時間をかけることで外乱抑制制御系の設計法も得られることは確信している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまでの研究結果を継続的に進めていく予定である。主として、外乱抑制制御則の設計法とサンプル値入力による制御則の設計法の理論的な確立を行う。そして、最終的には、それらの制御則の実システムへの実装を行う。実システムを制御する場合、通常、ディジタルコンピュータやディジタルセンサなどディジタル機器を使用する。したがって、システムの状態は連続的に変化する動特性を持っていても、システムの出力はサンプリング時間毎にのみ値が得られる。サンプル値制御はシステムの動特性と制御に用いるハードウエアを考慮した制御であり、サンプリング時間を変更しても、それに対応した制御系の設計ができるため、連続時間システムに対する制御則より有効な制御計設計が可能である。前年度までに得られた結果を利用して、サンプル値入力による出力フィードバックによる制御則の設計法を得ることが期待できる。さらに、最近の研究結果を利用すると、制御系の設計条件の緩和が期待でき、より広いクラスの非線形の実システムに対しても制御系の設計が可能となる。なお、むだ時間やロバスト性を考慮した制御系の設計はすでに前年度までに行ってきているが、それらのサンプル値制御系への応用も検討する。 さらに、得られた結果の有効性を確かめるために数値シミュレーションと実システムへの制御則の実装準備を行う。数値シミュレーションにより、安定性の確認だけでなく過渡特性や定常特性を考慮した制御系の設計を行う。また、実システムへの制御則の実装を考えて、ハードウエアとソフトウエアの2面より環境整備を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
これまでは、主に、様々な制御則設計法の理論的な確立を行ってきた。最終的には、それらの制御則の実システムへの実装を行う。まず、得られた結果の有効性を確かめるために数値シミュレーションを行う。数値計算ソフトウエアにより、制御系のシミュレーションを行い、過渡応答や定常特性も含めた制御系の数値的な評価を行う。その計算のために、数値計算ソフトウエアやコンピュータが必要となる。 その後、実システムへの制御則の実装準備を行う。実システムとしては、制御性能の評価に頻繁に使用される倒立振子、並びにヘリコプタの姿勢制御を考えている。これらの実システムを制御することは一般的には困難で、制御則の性能を評価するためには適している。実システムへの制御則の実装のため、ハードウエアとソフトウエアの2面より環境整備を行う。実際、実システムを駆動させるためには、ソフトウエアの開発とハードウエア各部の調整などが必要となる。そのために必要なソフトウエアやハードウエアも研究費により購入予定である。また、プログラム開発などにも経費がかかる。 さらに、研究結果を世界に公表するために、学術論文や国にも発表を考えている。これらの発表のために、論文代や学会参加費など経費も必要となる。
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Research Products
(9 results)