2011 Fiscal Year Research-status Report
人口密度分布のポテンシャル分析による東南アジア大陸部人口動向の解明
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23500307
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
梅川 通久 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 研究員 (80372548)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 東南アジア地域大陸部 / 数値計算 / 地理情報 / 人口密度 |
Research Abstract |
本研究全体を通じて、東南アジア地域大陸部広域に関する人口密度ポテンシャル分布の計算と可視化および主要な都市圏における同様の人口密度ポテンシャルの計算と可視化を行うこと、また、都市圏での数値計算結果の分析を補助するような情報を現地調査によって取得すること等が、その大まかな手法である。 平成23年度には、数値計算サーバーの立ち上げと計算スキームの移植など、技術的に必要な準備をまず行った。その上で広域の人口密度ポテンシャルに関して、既知の人口密度メッシュデータを活用したインドシナ半島部全域に関する計算を行った。その結果、計算対象地域のみの人口密度分布をもとにした人口密度ポテンシャルの分布からは、地域内の人口密度の高い地域に引かれる向きでの社会的力が人口密度に対してかかることが示され、またより広域のデータをもとにした計算からは、インドシナ半島を南東から北西に向かう大きな力の流れの存在を示すことができた。この結果からは、人口密度にかかる社会的な力の階層構造の存在が示唆される。この計算結果に関する報告を、日本地理学会において行った。 現地調査活動では、計画の通り対象としてタイ・バンコク市を選び、最初の調査を実施した。当初の計画では、あらかじめ得た情報を元に典型的な市街地を選択、それぞれの建物構造と居住者訪問者等の状況についての理解を深めることが第一段階の目的であったが、現地カウンターパートの協力により、市内各地区ごとの人口分布情報を入手する等、予定以上の進展があった。 その他、連携研究者との共同研究として、ミャンマー・カチン州の都市を含む広範な地名データのデータベース化を行う派生的研究を行った。その成果は、情報処理学会で報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
数値計算に関する技術的準備は、おおむね計画通り行った。付随する可視化ツールの準備やGIS関連の整備に関しては、当初計画に明確に盛り込んでいなかったが実質的に必要な最小限度の準備は完了し、GISによる可視化等派生的部分での技術的問題について、さらに継続して準備作業を行う必要がある。 研究本体の進展では、数値計算に関しては全体としておおむね順調に実施している。広域の人口密度ポテンシャルに関連した計算は、以前からの研究資料を引き継ぐ形で、東南アジア地域大陸部全体の計算を基礎計算として行った。その結果分析の為の1例としてインドシナ半島全体を含む広域についての計算結果を示している。このことから、目標の最小限の計算結果を出すに至っていると判断することができるが、2例目以降の計算についても早急に行いたい。都市部の人口密度ポテンシャルの数値計算については、当初から本年度は行わない計画となっている。 対象とする都市の現地調査活動では、予想以上に進展した部分と進展していない部分が併存しており、全体として計画の程度進んたと判断できる。進んでいる部分は、タイ・バンコク市の現地調査である。当初計画では都市の構造と居住者訪問者等の動きに関して基礎情報を得ることのみを目的としていたが、カウンターパートの協力によって具体的な各地区毎の人口データをえることができた。進展していない部分は、もうひとつの対象都市であるベトナム・ハノイ市の初回調査を実施できなかったことである。この原因は、バンコク市の調査によって得られた人口に関するデータの分析に手間取っていること等であり、今後速やかに初回調査活動を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画における今後に関連する部分を推進してゆく。また、調査対象として選定した都市のうち、調査開始が遅れているベトナム・ハノイ市の初回調査を速やかに行う。 人口密度ポテンシャルの数値計算に関して、既存データをもとにした計算事例を積み上げる。具体的には、インドシナ半島部の詳細計算と、タイ東北やラオスの国境周辺、ミャンマー周辺などの分析を計画しているが、その他に新しく利用可能となるデータの入手状況によっては、その他の計算を行う可能性もある。 都市部の人口密度分布に関する、広域と同様の数値計算と、そのもととなる数値データの獲得を目指す。第一歩として平成23年度に入手したバンコク市の地区別人口データをメッシュデータに加工し、市内の人口密度ポテンシャル分布計算のための準備を進め、最終的には計算を実施してゆく。また、もうひとつの対象都市であるベトナム・ハノイ市についても、情報収集をさらに進める。その他の都市に関しても、関連情報を得ることができないか情報を収集してゆく。 対象としであるバンコクおよびハノイについての、人口分布に関する現地調査をさらに推進する。最低年1回以上の訪問による継続的な調査を行い、数値データの収集を行う。また派生的事柄として、現地を調査することで初めて得られる発想をもとにした、関連する新規研究の発案と、関連する研究の紹介や知見の共有を模索する。具体的には、大都市圏の経済的中心部の発展状態と交通網の関係などといった派生テーマについて考慮する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度では、当初計画通りの対象であるバンコク市およびハノイ市2か所への調査を主として行う研究費使用が見込まれる。また、研究の進展によっては、連携研究者との共同研究に関係した、当初の調査対象都市とは異なる他都市への調査などを随時行う。追加的な調査を行う必要が生じた場合は、概算での予算額を考慮しつつ若干旅費を多く使う等の可能性がある。 特に、平成23年度に実施できなかった、ベトナム・ハノイ市への初回の調査を実施する。 数値計算サーバー等の基幹的な比較的高価な機材購入に関して計画では終了しているが、東南アジア地域大陸部に関連した、研究に直接必要な書籍・ソフトウェア資料の購入、価値ある関連資料の収集などについての支出を、引き続き行う。また、研究発表や研究打ち合わせなど、当初計画の範囲で必要に応じた支出を行う。
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Research Products
(2 results)