2012 Fiscal Year Research-status Report
人口密度分布のポテンシャル分析による東南アジア大陸部人口動向の解明
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23500307
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
梅川 通久 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 研究員 (80372548)
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Keywords | 東南アジア地域大陸部 / 都市人口 / 人口密度 / 地理情報 / 数値計算 |
Research Abstract |
本研究の基幹となる、人口密度分布に関するポテンシャルの数値計算と、地域の実情としての人口情報を定量的研究と結びつける為の調査活動のふたつの研究手法のうち、本年度は主としてタイ・バンコク市における人口密度分布の現地調査を、バンコク市内チャオプラヤ川両岸地域のサンプル抽出により実行した。調査の内容は、サンプル抽出した市街地内の一定の条件で選択した通りについて建築物をカウントし、居住人口の相対量を求める基礎資料とするものである。大都市における河川両岸の定量的比較情報、今後行うベトナム・ハノイ市における同様の調査の結果との比較情報を分析により見出し、都市部における人口密度ポテンシャルの数値計算結果と現場の実際とを定量的にむすびつける手法を得る考察を行う為の基本情報とする。具体的な分析に関しては、現在行っている。また、人口密度ポテンシャルの数値計算に関しては、前年度までの結果を補完する補助的な内容で実施した。 関連する研究として、人文・社会科学系研究者によるフィールドワークで得られた情報を社会一般に報告する等の、情報の共有および発信に資するシステムの開発を行った。これは、サイエンスの側面からは本研究に直接寄与するものではないが、研究の目的のひとつである定量的手法と現地調査などの現場が見える研究手法との融合や関連付けの新しい方法を模索するという側面を、技術的にサポートする内容の研究である。 さらに、本研究に関連する研究成果についての研究発表および論文執筆を年度内に行った。その他、現時点では公開される段階に至っていないが、本研究で基本理論を構築する予定である人口密度ポテンシャルの数値計算に関する考え方をまとめた論文を執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
遅れている要素は、あらかじめ比較の為の都市として選定された東南アジア地域大陸部主要都市のひとつ、ベトナム・ハノイ市の人口密度に関する現地調査である。予定では前年度に進めたタイ・バンコク市の調査に引き続いて比較の為の同内容での調査を開始し、今年度まで継続的に行う進展を想定していた。実際には、今年度いっぱいまでの期間をバンコク市の調査のみに要し、ハノイ市の調査は次年度から開始する状況となった。 この原因は、本研究とは別に同時進行する研究に要する時間との兼ね合い、そして本研究におけるバンコク市の予備調査からの調査手法と対象地域の選定に時間を要し、かつ実施の技術的な困難を予見できなかったことの2点があげられる。 前者の要因に関しては、純粋に研究時間のエフォート割り当ての問題であり、その時々の事情に応じて、一時的に偏りが生じることはやむを得ないといえる。また後者の要因については、乱数を用いた調査地区選定方法等の社会調査で取り扱う一般的な手法の導入に当初予想していた準備の為の期間以上に時間をかけてしまったこと、現地調査にかかる時間と身体能力的な問題の見積もりが現実的ではなく、計画を上回る時間が結果として必要になったことが、実際に発生した問題の内容である。
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Strategy for Future Research Activity |
ベトナム・ハノイ市の現地調査に関して、予定からの若干遅れが生じている。これに関しては調査をもとにして次の調査の内容を組む側面があるので、一律の前倒し実行による時間的な回復は難しいものの、最優先しての実行により遅れの拡大を予防し、分析や研究総括の時点で問題が生じないように留意する。 人口密度分布に関する理論と実践の融合という本研究の特色に関連して、今年度までのタイ・バンコク市の調査に引き続き比較対象都市であるハノイ市における人口と居住に関する調査を行う。手法はバンコク市の調査と同様とすることが、比較の為の前提である。まずハノイ市内の紅河を基準として、地図上で調査地域を乱数的に選択する。そして、選択区域内の建造物を一定の選択ルールの下で種類別に計測する。共通する仮定を導入することで、この計測からの人口密度に関する数値を求め、バンコク・ハノイ間の比較、同一市内における地域毎の比較などを行う。この様な実践的研究と、初年度を中心として行っている人口密度ポテンシャルの定量的解析による広域の分析との連携をどの様に行えば有効な結果を導き出せるか検討を開始し、本研究の総合的な結論へと結びつける。また、都市部を対象とした数値的研究の基礎資料の収集により、広域の事例に加えて都市部に関する数値計算の実行を目指す。 今年度に行った情報公開手法に関する技術的な関連研究について、次年度において試験運用を行う。 本研究で導入されている人口密度ポテンシャルの数値計算に関する理論的新規性が存在する部分について、査読論文等の形式での公開の為の作業を引き続き行い、研究期間内の投稿を目指す。その他調査結果や個別の研究に関連した小さな分析個々についても、順次発表等の形で公開をしつつ研究を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度分として措置された金額に関しては、当初の予定にほぼそって使用する。内容は、年度内に2回程度のハノイ市調査に加え、連携研究者との議論等の結果により、その他の都市に関する予備調査を行う可能性がある。また、国内学会や国際会議の為の旅費、出版の費用その他、資料やソフトウエアの購入等への使用が予定されている。 繰越金に関しては、過去の年度で行ったサーバ購入が予定より大幅に低額で可能であったことと、現地調査の実施回数が予定より少ない年度があったことに由来する。これは、次年度以降における海外調査や研究発表関連の渡航・出席等の日数を予定より増やすことで、過去に実施数が少なかった年度の分を補うこと、データ保存やその他の情報関連機器等を新たに購入することに割り当て、総額は最終年度までに計画の通りとなる予定である。
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Research Products
(2 results)