2011 Fiscal Year Research-status Report
時空間モデルによる地方自治体の電子化の現状分析とその促進に関する研究
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23500313
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
西出 哲人 兵庫県立大学, 会計研究科, 教授 (60264834)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森谷 義哉 兵庫県立大学, 経営学部, 准教授 (00275299)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 電子自治体 / 地方自治体 / 電子化 / 普及 / 空間モデル / 実証研究 |
Research Abstract |
本研究では、日本が諸外国と比較して遅れている地方自治体の電子化の現状を分析し、効率的に電子化を促進するための政策を提言することを目的としている。平成23年度は、まず、「地方公共団体における行政情報化の推進状況調査」(総務省)のデータを統計解析ソフトウェアで分析できるように基本的な整形を行った。そして、ドライランとして、自治体間の相互作用の観点から兵庫県内の基礎自治体に関する電子化の状況を考察し、今後の研究のための課題を検討した。 具体的には、平成18年度から平成22年度までの5年間に総務省によって実施された「地方公共団体における行政情報化推進状況調査」の調査データを統一的な形式を定めて整形した。調査データは年度ごとに異なる形式で保存されているので活用するのが難しかったが、統一的な形式に従って整形したことにより、今後は調査データをいろいろな分析に活用できるようになった。さらに、整形されたデータのうち、兵庫県下の基礎自治体のデータを用いて主成分分析を行い、電子化の取組状況と進捗度の指標を試作した。そして、それらの指標に基づいて自治体間の比較を行った。まず、取組状況指標を地図上に表現することによって、中心的な市を取り巻く自治体は電子化の状況が類似している傾向を読み取ることができた。また、電子化の取組状況と進捗度の関係を見つけ、それを地域ごとに考察した。これらの結果は、自治体が地域内において相互参照を行っている可能性があるという研究当初の仮説と矛盾しないものであり、今後、時空間モデルを利用した自治体間の相互作用の構造の分析やその構造に基づく波及効果を利用した政策提言を行う上での貴重な足掛かりとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
調査データの整形については、総務省によって実施された「地方公共団体における行政情報化推進状況調査」の平成18年度から平成22年度までの5年分のデータを統一的な形式を定めて整形した。調査年度で異なる質問項目の調整等の最終的な作業まで終了することはできなかったので、調査データの整形を完了したとはいえないが、基本的な分析及びドライランに必要なレベルまでは作業を順調に進めることができた。 また、ドライランについては、5年分の調査データのうち、初年度(平成18年度)と最終年度(平成22年度)のデータを比較することによって、兵庫県下の基礎自治体に関して電子化の取組状況と進捗状況について考察した。そして、このドライランの結果について学会発表を行ったところ、参加していた研究者や実務者から同意を得ただけでなく、本研究をさらに発展させるような意見も出たので、ドライランの結果は研究当初の仮説に肯定的であると理解している。したがって、今後も基本的には計画通りに研究を進めることができると思われる。ただし、「地方公共団体における行政情報化推進状況調査」の質問項目が研究当初の想定よりも多く調査年度ごとに異なっていたために、ドライランに利用する質問項目が限定されてしまい、電子化の推進状況の指数化が不十分なレベルになった。そのために、統計学的にさらに精緻な分析を行うことができなかった。 以上から、いくつかの問題があるものの研究を遅らせるほどのものではないので、本研究はおおむね順調に進展していると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、平成23年度に十分に達成できなかった主な2点について研究を進める。一つ目は、調査年度で異なる質問項目の調整等の作業を行い、調査データを経時的変化の分析ができる形式にして調査データの整形を完了することである。二つ目は、不十分な電子化の推進状況の指数化を改善するために、総務省による「地方公共団体における行政情報化推進状況調査」の調査データから自治体の電子化に関して4つの要因を導き、それぞれを数値化することによって自治体の電子化の達成度を指標化する。これは、調査に多数の質問項目がある上に、調査年度ごとに異なる質問項目が多い問題に対応するために、一つの指標ではなく、4つの指標を作成することによって、指数化の完成度を高めるためである。また、4つの要因としては、平成23年度の分析から「マネジメント」、「バックオフィスの電子化」、「サービスデリバリ」、「新技術(GIS)」の4要因を予想している。 これらをふまえて、電子化の達成度の変化を自治体間の空間的波及効果の観点から検討する。特に、住民が形成する自治体間の関係性を利用すれば、電子化の進捗に関する地域区分やオピニオンリーダ的な自治体の類推が期待できる。住民が形成する自治体間の関係性としては、国勢調査の通勤通学に関するデータを活用することを考えている。また近年、米国を中心に地方自治体の電子化に関する実証研究が増えつつある。その中では、個々の自治体が直面している経済、社会的要因によって電子化の進捗状況を説明しようとするものが多い。本研究でも、これらの先行研究を参照しながら、自治体の財政状況等を分析に組み込む予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度の研究活動では、調査の質問項目が研究当初の想定よりも多く調査年度ごとに異なっていたため、統一的な形式を定めるための議論と調査データの整形作業に時間がかかってしまった。その結果、分析用のPCの購入時期および研究補助が必要な作業の一部が年度末近くになった。これにより、事務手続のタイミングにずれが生じ、「次年度使用額」が計上されることになったが、実質的には計画的に支出されている。経費管理担当者の説明によると、今回の収支状況は3月31日現在の支出分についての記載であり、3月31日までに納品されたにもかかわらず4月に支払われた経費についての計上がなされていない。本研究では、分析用PC(ソフトウェアおよび周辺機器を含む)購入費、資料整理棚購入費、研究補助の人件費がこれに相当するが、すでに計画どおり支出されている。 平成24年度は、調査データの整形作業は完了の目処がついているので、速やかに分析用のソフトウェアを整備しながら分析を始める。ここで、調査データの整形を行うためには研究補助の学生を活用する。また、電子化の達成度の指標化には、さまざまな方法が想定され、試行錯誤を行う必要があるので、研究補助の学生はこの作業も担当する。 次に、電子化の達成度に関する時空間的な分析を進めるために、本学には所蔵していない図書・雑誌・資料等を購入する。 最後に、分析結果を学会等で報告するために旅費を必要とする。
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Research Products
(2 results)