2012 Fiscal Year Research-status Report
Historical GISのための歴史的境界線情報の実践的データ化に関する研究
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23500317
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Research Institution | Osaka Electro-Communication University |
Principal Investigator |
加藤 常員 大阪電気通信大学, 情報通信工学部, 准教授 (50202015)
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Keywords | 地理情報システム / 歴史情報 / Historical GIS / 旧境界線 / 村境界 / 空間情報 / シェープファイル |
Research Abstract |
昨年度に引き続き、旧境界線のデータ化を行うシステムの開発を進める一方、旧村境がどのように自然地形等の影響を受けるのかを知るため、数か所の現地調査を行った。また、本課題の出発点となった江戸時代の人口移動分析のシステム化の試みおよび本課題の取り組みをまとめた内容がHGIS研究協議会編集の書籍「歴史GISの地平」の一部として収録された。 システムの開発は、昨年度に試作済みのプロトタイプシステムを用いて仮想の境界線をデータ化する実験を繰り返し、その結果を踏まえプロトタイプシステムの改良する方法で進めた。実験を通して幾つかの改良すべき不具合が判明した。本年度はそのうち入力操作系および補間データの生成系について改良を行った。 入力はマウス操作により領域概形を与える。昨年度段階では領域概形を多角形頂点列として与え、頂点間に一定間隔で始点側から補間点を設ける方法を採用していた。この方法では不用意に多くの頂点を与えてしまう傾向に陥り易く、無意味な計算量の増加となっている。また、設定する多角形の各辺長のバラツキが大きく、一定間隔の補間ではその効能が有効に機能せず求まる境界線に振動が現れる。これらの不具合に対して領域概形の指定を多角形からBスプライン補間による閉曲線に変更し、形状の変化に応じた補間点を採取する方法に変更した。この変更により、目的とするなめらかな漠然とした境界線の取得が可能となった一方、確定できる境界線部分の扱いを別途対処する必要が生じた。 開発を進めるシステムの本年度の進展部分は見解が異なる境界線部分や湿地など境界線の不明確な個所の便宜的な境界線データを生成に当たり、精度を関わる部分である。この事項をより強固にすることにより従来、歴史的境界線の空間データ化の障害となっていた不明確な境界個所への具体的な対応策となりその意義は大きい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本課題はHistorical GISで活用される過去の空間情報の現状を踏まえ、実践的に活用できる電子データ化手法の開発、開発をめざすものである。本年度は前年度の検討結果を踏まえ1.手法の改良、改善と本格的データ採取に対応したシステムの開発への着手、2.藩政村の代表点の設置方法の検討、3.システムのユーザインタフェースの開発と出力形式の検討、4.先行システムとの融合の検討、の4つの項目を研究推進の方向とした。 各項目の推進状況は1.および3.に大半の時間が取られた。昨年度作成の試験システムでは具体的に境界線生成実験を行うと恣意性が高く再現性に問題があり、その点に関して改良を行ったがまだ十分とは言えない。2.については検討の結果、史実の代表点と描画用の代表点を別途準備する方針で手法の開発を進める段階にある。4.については未着手状態である。総合評価としてて研究の現在までの達成度はやや遅れていると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進の指針は、開発を進めてきたプロトタイプシステムを更に発展させ、実践的仕様に基づく旧境界線生成システムの構築を進めるとともに、ベースマップ等の基本資料、藩政村に関する資料の取集、データベース化を並行して進める。一方、Historical GIS エンジンに取り込み、データを活用する特化した実践的な処理で生成データの使用を試みる。具体的な対象地域として摂津国および武蔵国多摩郡の藩政村についての空間データ化を目指す。 次年度は本年度の遅れを勘案し、1.本格的データ採取に対応した旧境界線を生成方法およびシステムの実践的構築に取り掛る。2.藩政村の代表点の設定方法を検討する。3.システム入力データおよびシステムで生成される旧境界線データのデータベース化と活用について検討する。4.構成されたファイルを先行研究「江戸時代における人口移動分析システム」で開発済みのGISエンジンに取り込む。必要に応じてGISエンジンの改良を行う。5.旧幕政村の実地調査を行い、代表点の設定についての検討・手順化を試みる予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究推進に当たり必要な主な費用は、1.提案手法およびシステムの実践的へ向けて試行錯誤的な開発に対応した環境を整える必要がありハードウェアおよびソフトウェアに関わる費用。2.藩政村の村名称の収集および村位置(代表点)情報の設定の実地調査および計測、データベース化に関する謝金等の費用。3.境界線データ化の対象地域(摂津国および武蔵国多摩郡)の史料(資料)の調査・収集・整理・データベース化に関わる旅費、謝金等の費用。4.構築したシステムの試行実験および実験結果の整理、評価、公開などに伴う謝金等を想定している。
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Research Products
(1 results)