2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23500319
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Research Institution | 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館 |
Principal Investigator |
田良島 哲 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, その他部局等, 調査研究課長 (60370996)
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Keywords | 古筆 / 紙背文書 / 古文書学 |
Research Abstract |
1 古筆切原本の調査及び情報の収集 (1)東京国立博物館寄託の手鑑1件、および文化庁が保管する手鑑1件について精査し、紙背の有無を確認した。東京国立博物館寄託の手鑑1件は全点について高精細デジタル画像を撮影し、今後のより詳細な調査に備えた。 (2)古筆切紙背の状態について網羅的に把握するために、書道史の専門とする大学院生に委託して、既存の刊本で確認できる古筆切紙背の情報収集を行い、約400件に関して名称、所蔵者、出典、写真の複写などを記載した資料を作成した。上記作業に必要な当館に未所蔵の書籍等については、新規に購入した。 2 研究の成果 (1)刊本の網羅的な確認により、「古筆切紙背」という概念を立てて研究を行うことの妥当性が確認され、類型化を行うための基盤を検討する素材を得ることができた。 (2)文化庁保管の古筆手鑑の中に、前年度に当館所蔵の手鑑で確認したのと同じように、同一典籍の料紙を解体して一次利用面を複数の古筆として利用している事例を確認できた。このことから、手鑑編纂のプロセスにおいて、適当な伝承筆者に充当するために紙背、特に書状のある古典籍を解体利用することが、一つの手法として行われていたことの蓋然性が高くなり、さまざまな手鑑に貼りこまれた出所不明の古筆の伝来を検討するための一つの手がかりとなることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1 古筆切紙背の情報収集に関しては順調に進み、現在入手可能な公開情報についてはほぼ網羅的に収集することができたものと考えている。 2 東京国立博物館が所蔵する古筆資料については、おおむね現状を把握することができた。今後は寄託品に関する精査を進める必要がある。 3 外部機関が所蔵する、特に画像の公開されていない古筆については、確認をするべきものがあり、残余期間で可能な限り調査に取り組む。
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Strategy for Future Research Activity |
1 東京国立博物館の寄託資料に含まれる古筆切の精査と高精細データの作成を継続し、おおむね調査を完了する。主な対象は古筆手鑑6件とする。 2 外部機関所蔵の古筆手鑑について、許諾の得られる範囲で調査及び画像撮影を実施する。 3 上記の成果をもとに、古筆切紙背に関する概説的な論文を執筆し、学会誌等に投稿する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費: 約300千円 書籍等研究に必要な資料を購入する。 旅費: 約200千円 外部機関の所蔵先に出張し、調査を行う。 人件費: 約150千円 画像等、調査資料の整理を行わせる。 その他: 約750千円 手鑑等原資料の高精細画像を撮影する
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