2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23500319
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Research Institution | 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館 |
Principal Investigator |
田良島 哲 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, その他部局等, 調査研究課長 (60370996)
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Keywords | 古筆切 / 紙背文書 / 手鑑 / 古文書学 / 古筆学 |
Research Abstract |
1 古筆切原本の調査及び複製本等による情報の収集 (1)文化庁所蔵の古筆手鑑2帖のうち1帖(1帖は平成24年度に調査)について、詳細調査を行った。(2)上記手鑑及び京都国立博物館所蔵の古筆手鑑「翰墨場」の2件について、貼り込まれている全点の切の高精細画像データを作成した。(3)前年度に引き続いて、良質の複製本を購入し、情報の収集に努めた。 2 研究の成果 現在見られる古筆切の裏面に墨書や墨摺がある場合、その伝来は現在の表面が一次利用面か二次利用面かによって、その性格が異なる。第一は、現在の表面が二次利用面である場合、多くは二次利用面の典籍等が重視されて分割されたものである。たとえば伏見天皇宸翰として著名な「広沢切」は具注暦や書状を裏返して歌集の草稿が書かれているが、この場合の裏面が、古文書学で言うところの「紙背文書」となる。第ニは、現在の裏面が一次利用面である場合、今回の研究の主要な対象である。基本的に、一旦不要とされた一次利用面が手鑑に貼り込まれるなどの形で「古筆」としてよみがえったものである。この場合については、今回実例を収集することによって多少の類型化が可能となった。 まず、二次利用面が写経または版経である場合で、これは故人や法会の結縁者の筆跡のある料紙を裏返して書写・摺写した経典が解体されて成立する。これまではあまり注目されなかったが、最近は経文の確認が容易になったため、複数の切の間の一括関係を判定し、切の集積である文書群の歴史的性格を推測することが可能となるだろう。 次に、裏面が典籍である場合である。これまでの研究で指摘したところだが、一つの手鑑の中に、明らかに同じ典籍の断簡を裏面に持つ複数の切(多くの場合筆写不詳の書状)が含まれることがある。これは手鑑の編纂に近い時点で当該の典籍が解体されたことを示唆しており、典籍自体の伝来を研究する上で重要な手がかりとなる。
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