2011 Fiscal Year Research-status Report
視覚皮質における活性化拡散を指標とする視覚情報処理過程の解析
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23500320
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
河西 哲子 北海道大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (50241427)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 知覚 / 注意 / 物体 / 視覚システム / 事象関連電位 |
Research Abstract |
本研究は、事象関連電位(event-related potential, ERP)の注意拡散パラダイムを用いて、さまざまな刺激・課題文脈における視覚皮質上の活性化拡散過程を検討し、視覚情報処理の順序・時間の可変性を明らかにすることを最終目標とする。初年度である平成23年度は、さまざまな群化要因による注意拡散過程を同定することを目的とし、複数の群化要因ならびに文字列における語彙性を操作した一連の実験を行った。その結果、以下の知見を得た。(1)アモーダルな視覚的補完による注意拡散過程をN1成分に同定し、物体ベースの注意選択機構が、物体同定過程に寄与することを明らかにした。(国内・国際学会で発表;国際学術誌に投稿し、現在修正論文が審査中。)(2)博士課程に在籍する竹谷隆司が中心となって進めた。色類似性と形類似性(対称性)、形類似性と連結性が共存するときの注意拡散過程を調べた。対称性による注意拡散過程を同定するとともに、複数の注意選択段階(P1, N1, N2)において、それぞれの群化要因が互いに独立に作用することを明らかにした。(国内・国際学会での発表予定;現在国際学術誌への投稿を準備中。)(3)文字列を刺激とした近接要素間の注意誘導過程が、卒業論文として進められた。形非類似性により、分節化による早い注意誘導効果を同定した。(国際学会での発表。)(4)修士課程に在籍する山田優士が中心になって進めた。共通領域による注意拡散過程を他の群化要因と同じN1成分に同定した。(国内・国際学会での発表予定;現在国際学術誌への投稿を準備中。)(5)博士課程に在籍する学術振興会特別研究員である奥村安寿子が中心となって進めた。文字列において単語と非単語を比較し、語彙知識に基づく注意拡散が物理的な群化要因の場合と同じN1成分に反映されることを見いだした。(国内・国際学会での発表予定;現在国際学術誌への投稿を準備中。)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)アモーダル補完に関する研究では、物体ベースの注意研究においてそれまで明確に区別されてこなかった特徴ベースの注意拡散の問題を考慮した上で、注意が作用する物体表象の性質について新たな知見を提出するものである。投稿中の国際学術雑誌であるNeuropsychologiaでは、現在2度目の審査を終え最終段階であるが、審査者から高い評価を得ている。(2)注意の誘導におけるゲシュタルト要因間の加算性が、はじめて厳密な実験操作によって示された。また、従来の我々の実験と異なる特徴次元で標的を定義したところ、これまでよりも早い時間帯にERPの注意拡散効果が生じたため、課題文脈によって空間統合処理の時間が異なる可能性が示された。(3)近接要素間の注意誘導効果の研究においては、焦点的注意による影響の実験がまだ残されている。(4)領域共通性による注意拡散の研究においては、物体先行提示の影響の検討がまだ残されている。(5)語彙知識による注意拡散は、学習によって習得した知識に基づく(トップダウン的な)注意拡散をはじめて同定したと言える。これは24年度の行う実験の予定であったが、23年度に実行することが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
H24年度は、H23年度に得られた注意拡散過程の基本性質に関する知見を発展させて、課題(難易度、性質)と刺激文脈(先行提示)を操作し、視覚処理初期から始まる一連の視空間統合過程がどのように変容するかを検討する。またH25年度は立体視事態における脳波実験を中心に展開する予定であるが、H24年度に提示装置などの準備を進める。 研究の推進にあたり、引き続き、大学院生の協力を得て実験・分析を行うとともに、国内・外での学会および国際学術誌でのデータの公表に努める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H24年度は引き続き実験を行うにあたり、実験遂行・分析に関わる大学院生への謝金、実験参加者への謝金、脳波実験消耗品および刺激提示ソフトウェアの購入、国内・外で学会発表を行うための出張旅費に研究費を使用する計画である。 なおH23年度未使用額(205千円)は、予定していた国際学会に都合により不参加になったため生じた。この未使用額は、H24年度に、立体視提示ソフトウェアの購入の一部にあてる。
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Research Products
(4 results)