2011 Fiscal Year Research-status Report
心理物理学的逆相関法による高次認知判断プロセスの推定法
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23500321
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Research Institution | Muroran Institute of Technology |
Principal Investigator |
渡部 修 室蘭工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50343017)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 心理物理学 / 逆相関法 / 統計量 / 刺激分布 / カーネル |
Research Abstract |
心理物理学的逆相関法は,被験者の入出力(呈示刺激と被験者応答)の統計量から認知判断に関わる脳内演算を推定する手法であり,脳の認知メカニズムの解明に新たな知見を与えると期待されている.しかし,その分析手法には強い制約が存在するため,比較的初期の視知覚実験にしか用いられてこなかった.本研究課題は,従来の心理物理学的逆相関法を拡張し,高次認知機能の実験にも適用できる新たな分析手法を確立するとともに,実際に視覚心理実験に適用し,その有効性を検証することを目的としている. 平成23年度は,分析手法を確立するための数理的な研究を行った.理論解析としては,入出力の統計量(呈示刺激と被験者応答のモーメント)と被験者の認知判断特性(カーネル)の不変的関係を解析し,カーネル推定のためのアルゴリズムを導出した.この提案手法の特徴は,刺激の選び方による推定バイアスが生じない点にある.例えばパターン弁別などの比較的高次な認知課題では,刺激として複雑な幾何学図形や自然画像などを用いることが想定される.しかし,従来の心理物理学的逆相関法では,使用する刺激に強い制約があり,任意の刺激を用いた場合は正しい分析が行えなかった.このことが,これまで心理物理学的逆相関法が高次認知機能の実験へ適用されてこなかった大きな理由の一つである.提案手法では,実験者が用意した刺激分布の情報も用いて分析を行うことで,不偏な推定を実現している.また,理論解析と同時に,計算機を用いた数値シミュレーションも行い,提案手法の精度を定量的に評価した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画通り,新たな実験分析手法の導出と数値シミュレーションによる検証を実施し,その成果を学会等で発表した.しかし,提案手法で用いた様々な仮定が,実際の実験データの分析においても妥当かどうかは,次年度の実験的検証で確認する必要がある.このため,現在までのところおおむね順調に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度に構築した分析手法を用いて,実際に視覚心理実験を行い,実験データからカーネル推定を行う.また,これと並行して,カーネル推定に必要な試行数を低減するための適応的手法を検討する.ここでは,カーネル推定への寄与が大きなデータを探索する方法の理論的研究を行うとともに,数値シミュレーションによりその有効性を評価する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
心理実験および数値シミュレーションに必要な設備はすでに導入している.このため,次年度の研究費は研究成果発表にかかる費用(旅費,学会参加費,論文別刷費)が主要なものとなる.また,平成23年度の成果の一部についても,年度をまたいで次年度に発表する.このため,次年度使用額が生じているが,これも研究成果発表にかかる費用の一部として使用する.
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