2014 Fiscal Year Annual Research Report
発話における遠心性コピーの神経機構:頭蓋内脳波による検討
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23500322
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
丹治 和世 山形大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (20512619)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柳川 透 独立行政法人理化学研究所, その他部局等, 研究員 (80568858)
舟生 勇人 山形大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40436209)
岩崎 真樹 東北大学, 大学病院, 講師 (00420018)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 発語失行 / 運動前野 / 頭蓋内脳波 |
Outline of Annual Research Achievements |
発話のセルフモニタリングにおける遠心性コピーの神経基盤を解明するために、まずは発話の運動面に密接な関連のある中心前回に着目した。脳腫瘍切除のための覚醒下手術中に中心前回に電極を留置した3症例において、聴覚および視覚刺激を用いた動詞生成課題遂行中の頭蓋内脳波における誘発反応を測定した。すべての症例で、中心前回腹側において聴覚刺激に対する反応が観察され、いずれにおいても聴覚反応に引き続いて運動反応を伴った。うち1例では、腫瘍の摘出のために、やむをえず聴覚反応が検出された部位が切除された。術後、この症例では言語の理解障害はみられず、高次の構音異常である発語失行をきたした。構音異常の特徴として、構音の歪みの他に音素の系列化異常がみられた。今回の観察から、中心前回の中でも、聴覚情報の入力を有する部位の損傷により、構音運動の遂行、とりわけ系列化に障害が生じることが示された。 今回観察された運動前野の聴覚反応については、先行するfMRI研究でも報告はあり、その機能については、言語の理解に寄与するという説(motor theory of speech perception)が優勢であった。しかし、その後の研究では、雑音の存在下など、一定の負荷がかかる状況でのみ理解に寄与し、通常の言語理解には寄与しないことが定説となった。今回のわれわれの観察結果は、聴覚入力を有する運動前野の一部位が言語の理解よりも構音の表出に強く関与する領域であることを示唆し、先行研究と一致する。また、今回の結果から、運動前野が聴覚入力をもとに、音韻表象が運動表象として系列化される際に重要な機能を担う部位であることが推定された。先行研究では、聴覚反応をもつ運動前野の部位が発話の遠心性コピーの発生源になると推定されており、本研究で得られた知見と一致する。
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Research Products
(7 results)