2011 Fiscal Year Research-status Report
模倣の発達・進化的起源:自発的同調現象と社会的糊機能に着目した実証的検討
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23500330
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
小林 洋美 九州大学, 人間・環境学研究科(研究院), 学術協力研究員 (30464390)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橋弥 和秀 九州大学, 人間・環境学研究科(研究院), 准教授 (20324593)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 動作の同調 / 自発的模倣 / 社会的糊 / チンパンジー / 言語発達 / we / 乳幼児 |
Research Abstract |
ヒト以外の動物においても模倣認知が社会的糊として機能する可能性を検討した。北九州市到津の森公園で、模倣等の実験経験のない飼育チンパンジーを対象とした。実験者はチンパンジー とケージ越しに対面遊びの後、ジャンプあるいはスウィングの行動を随時繰り返し、チンパンジー の反応をマルチアングルで記録した。模倣に対する直接的な強化は一切行わなかった。更に、実験者とチンパンジーの動作が同調したのち、実験者が行動の速度を変化させ、チンパンジーがどのような反応をするか記録した。その結果、チンパンジー1個体は実験者がジャンプするとジャンプ、スイングするとスイングし、さらに実験者がタイミングを変化させると自らの動きを調整し同調を維持した。この成果は2012年3月に開催された「北海道大学グローバルCOE「心の社会性に関する教育研究拠点」総括シンポジウム」で発表した(小林、延吉、桐山、橋彌、2012)。 「わたしたち」の言語発達過程の検討社会的結びつきを示唆する単語として「わたしたち」が考えられる。この語の獲得過程について検討した。英語の発話ベースであるCHILDSから「we」の出現時期を調べ,その成果を2011年11月に開催された「日本人間行動進化がっかい第4回大会」で発表した(橋彌、2011)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初よていでは、初年度にヒト乳幼児における動作および姿勢の自発的同調について実験的検討を予定していたが、謝金等の確保が交付日程から遅れることが予測されたので、次年度に予定していたチンパンジー研究を先におこなった。結果としてチンパンジー研究は順調に進んだが、ヒト乳幼児研究は次年度におこなうことになったので、予定は逆転したものの、順調といえるだろう。さらに、新たな調査として、「わたしたち」という語の発達過程の検討も進んだ。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、ヒト乳幼児における自発的な姿勢・動作同調の出現時期の特定を主に進める。 対象月齢:同一の玩具を対で5種類用意し、乳幼児と実験者の3 分間の対面遊び条件下で、生後18 ヶ月以降の幼児は実験者と同じ玩具同じ動作をおこなった(業績20)。この予備実験で生後18 ヶ月から自発的模倣が出現していることから、研究対象月齢を12~24 ヶ月児に設定する。ただし、予備実験では同一玩具が対で複数用意されているため玩具の顕在性が高いが、本実験で使用する姿勢や動作は玩具にくらべ顕在性が低い。そのため姿勢・動作同調の出現は18 ヶ月より後になることが予想される。そこで調査開始から乳幼児の行動を分析し月齢を随時調整する。方法: 2003 年から稼働している九州大学内に設置した部屋を主な実施場所とし、可能な限り自然な状況で、数種類の玩具を配し実験者との5 分間の対面遊び条件下での乳幼児の姿勢や動作をマルチアングルで記録する。この5分間、実験者は姿勢を「正座/横座り」等とし、玩具で遊びながら「頭を撫でる/口を撫でる」等の動作をおこなう。マルチアングルで記録したビデオ映像をスプリッターで合成し、厳密な同期を確保した上でコマ単位での分析をELAN を用いておこない、対象児の姿勢・動作同調の出現時期を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究では大量のデータを保存・分析・編集する必要がある。またプライバシー保護のためにそれらを厳重に保管する必要があり、そのためにはデータを一元的に保存・バックアップすることによって確実な管理を行わなければならない。従って、高スペックで大容量ハードディスクを備えたコンピュータが必要である。また、複数の研究課題を並行して行うため、実験を遂行する撮影機器と管理するノートPC と、PC トラブル(買替)の必要性を想定して購入予算を組んでいる。■実験協力のために母子でおいでいただく協力者への謝金は1 回1 組当たり2000 円(交通費込み)としており、協力者のご理解のもとに低額に抑えているが、十分なデータ数を確保した上で複数の研究課題を遂行するためには計上した額が必要である。募集のための広告掲載費も不可欠である。■資料収集・分析のための雇用は、大量のデータを速やかに処理し成果をまとめる上で不可欠であり、計上せざるを得ない。
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