2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23500334
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Research Institution | Tokyo University of Technology |
Principal Investigator |
菊池 眞之 東京工科大学, コンピュータサイエンス学部, 講師 (20291437)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 視覚科学 / 3次元物体 / 両眼立体視 / 凹凸 / 心理物理実験 |
Research Abstract |
2次元輪郭より知覚される3次元構造についての研究では,形状が滑らかかつランダムな2次元閉曲線を自動生成し,閉曲線の内部・外部判定アルゴリズムによって内部格子点を特定した上で,各格子点に順次プローブを呈示し調整法で被験者が自然であると思われる奥行に視差を調整する心理物理実験プログラムを作成した.複数名の被験者を対象に実験を実施し,加算平均をとる事で,島の地形状の奥行構造の傾向が観察されている.3次元凹/凸特徴部の主観的形状に関する研究では,ランダムドット・ステレオグラムによって描画される球の手前または奥側に円錐状の窪み/突起を付加した刺激を用いた以下の2つの心理物理実験を考案・実施した.(1)凹凸特徴部の形状変化の閾値を検出する実験.(2)凹凸部のそれぞれの知覚的なサイズと物理的なサイズとを比較する実験.いずれの実験も複数名の被験者を対象に実施している.凹/凸刺激に対する知覚的差異を顕在化させる最適パラメータの導出が課題となっている.また,運動する3次元的な凹/凸構造をもつ物体の一部を覗き窓から観察した際の物体全体運動を特定する運動統合課題の心理物理実験を行い,凹に対し凸の特徴を有するパターンのほうが有意に運動統合の知覚の精度が高まるという知見を得た.これは本課題の根底的テーマである凹/凸の認知的差異を焙り出す重要な発見であると言える.一方,上述の凹凸刺激の知覚的サイズの比較の研究に関連し,様々な2次元閉曲線刺激を用いた心理物理実験を実施して凹/凸では明確な知覚的差異が生じるという結果になっている.閉曲線内外の局所刺激要素の存在密度を一定化するpath-paradigmを取り入れた実験の準備も進めている.知覚的サイズ変調の発生の有無のみならず,変調の程度と刺激の特徴の関係について解明することが今後の課題となる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度に計画された実験のうち,順調に成果が得られているもの,途中段階のもの,本研究課題に密接に関連する新しい視点での成果が得られたものなどがある.以下に具体的に述べる.2次元輪郭により知覚される3次元構造の研究については,引き続き次年度も実施するが,当該年度終了時点においてほぼ所望の結果が導けていると考えている.ただし,この研究の発展版となる,ランダムに生成される3次元物体の遮蔽輪郭から知覚される3次元構造と本来の遮蔽輪郭生成源となる3次元物体の構造との差異の検討については,今後の課題として残っている.一方,3次元物体の凹/凸各特徴部分における主観的な立体形状に関する実験に関しては,実験の構築・予備実験実施は行えたものの,最適なパラメータの調整が完遂していない.また,本研究課題の本質に密接に関わる新しい観点からの知見として,凹凸構造を有する3次元オブジェクトの局所運動からの大域的運動の知覚に関する知見も導き出されていた.2次元物体の知覚的サイズに関する知見も集積されてきている.以上のことを踏まえると,全体としては概ね順調であると評価できると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
2次元輪郭からの3次元構造知覚の研究については,ランダムに生成される3次元物体の遮蔽輪郭から知覚される3次元構造と本来の遮蔽輪郭生成源となる3次元物体の構造との差異を検討する実験を次年度の完遂を目指して引き続き取り組んでゆく.3次元物体の凹/凸各特徴部分における主観的な立体形状に関する実験に関しては,最適刺激パラメータ導出と実験実施を次年度の完遂を目指して取り組んでゆく.物体認識における3次元表面の凹/凸特徴の寄与について調べる研究は,予定通り次年度に開始し,その翌年前半には成果がまとまるよう進めてゆく.3次元表面の傾きの不連続により形成される尾根/谷状の輪郭同士の統合知覚についての研究では,予定通りに最終年度となる3年目に実施する.研究の土台はある程度構築されているので,本課題期間中に成果を導けるものと考えている.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
両眼の視線計測機器を購入し,呈示される3次元オブジェクトの何処を被験者が注視しながら実験を行うのかを吟味できるようにする.実験の被験者は,学生アルバイトを起用する.そのための人件費を支出する.研究の成果を国際会議ならびに国内研究会にて発表する.そのための旅費・宿泊費・参加費等を支出する.
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