2012 Fiscal Year Research-status Report
“気がきく”ことの加齢変化とその機能的メカニズムに関する認知神経心理学的検討
Project/Area Number |
23500337
|
Research Institution | Graduate School of Health Care Science, Jikei Institute |
Principal Investigator |
石松 一真 滋慶医療科学大学院大学, 医療管理学研究科, 准教授 (30399505)
|
Keywords | 展望記憶 / 尺度構成 |
Research Abstract |
本研究では「気がきく」ことの機能的メカニズムを認知神経心理学的観点から解明することを目的とし、1.「気がきく」ことの評価課題の作成、2.「気がきく」ことに生じる年齢差の検討、3.「気がきく」ことと展望記憶との関連性の検討、の3つのサブテーマを設定した。本研究では「気がきく」ことを、場面に現れる『サイン』に気がつき、『サイン』に対応する『行為』を想起し、その『行為』をプランし、タイミングよく実行できること、と定義した。 本年度は質問紙調査を実施し、2.「気がきく」ことに生じる年齢差の検討、3.「気がきく」ことと展望記憶との関連性の検討、の2つのサブテーマに取り組んだ。まず昨年度作成した質問紙の項目を再検討し、尺度構成法の手続きに従って、“気がきく”尺度の構成を試みた。18歳から65歳までの480名を対象とした質問紙調査では、新たな質問項目を追加した“気がきく”尺度及び展望記憶尺度(Smith et al., 2000)について5件法での回答を求めた。また「気がきく」ことに関する自己評定を4件法で求めた。結果、“気がきく”尺度は、内的整合性を有する3因子から構成されることが確認された。 相関分析を行った結果、“気がきく”尺度得点と展望記憶尺度得点との間に弱い正の相関が認められ、類似したメカニズムを有する展望記憶の概念を拡張することによって、「気がきく」ことの機能的メカニズムを解明できる可能性が示された。また“気がきく”尺度得点と自己評定との間にも弱い正の相関が認められ、“気がきく”尺度は自己評定の結果とも整合性を有する尺度であることが明らかとなった。一方、“気がきく”尺度得点と年齢との間にはほとんど相関が認められなかった。年齢差に関しては、個人差も含めて今後さらに検討を進めていく予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、昨年度の進捗状況を踏まえ、サブテーマ2.「気がきく」ことに生じる年齢差の検討、と3.「気がきく」ことと展望記憶との関連性の検討、に取り組んだ。 “気がきく”尺度などから構成される質問紙調査を実施し、18歳から65歳までの幅広い年齢層から回答を得た。結果、「気がきく」ことと展望記憶との関連性を示唆するデータや「気がきく」ことの年齢差を検討する上で必要となるデータを収集することができた。 一方、本年度に予定していたPCベースの評価課題を用いた実験は、来年度実施することとした。 このように、「気がきく」ことの機能的メカニズムを認知神経心理学的観点から解明することを目的とした本研究は、おおむね順調に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる平成25年度は、PCベースの評価課題を用いた実験を中心に研究を進めていく予定である。 1.「気がきく」ことの評価課題の作成、2.「気がきく」ことに生じる年齢差の検討、3.「気がきく」ことと展望記憶との関連性の検討、の3つのサブテーマについて、質問紙調査及びPCベースの評価課題を用いた実験から得られた結果を総合的に考察し、本研究の目的である「気がきく」ことの機能的メカニズムの解明に取り組んでいく予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は、“気がきく”尺度の構成をはじめ、質問紙調査を中心に研究を進めた。質問紙調査では、調査協力者への質問紙の郵送費などが発生しなかったため、支出を予定していた予算を次年度に繰り越すこととした。またPCベースの評価課題を用いた実験を実施する際に支出を予定していた実験参加者および実験補助者への謝金などについても次年度に繰り越すこととした。 平成25年度は、PCベースの評価課題を用いた実験を中心に研究を進める予定である。また実験参加者を当初の計画よりも増やす方向で現在準備を進めているため、平成25年度の研究費の使用計画としては、実験参加者および実験補助者への謝金などの支出が中心となる。また“気がきく”尺度などから構成される質問紙調査は、可能な範囲で平成25年度も継続する予定である。そのため、質問紙の郵送費などの支出も必要になることが予測される。 さらに平成25年度は本研究課題の最終年度となるため、研究成果に関する学会発表や論文執筆にも取り組んでいく予定である。
|