2013 Fiscal Year Research-status Report
“気がきく”ことの加齢変化とその機能的メカニズムに関する認知神経心理学的検討
Project/Area Number |
23500337
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Research Institution | Graduate School of Health Care Science, Jikei Institute |
Principal Investigator |
石松 一真 滋慶医療科学大学院大学, 医療管理学研究科, 准教授 (30399505)
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Keywords | 展望記憶 / 尺度構成 / 加齢 |
Research Abstract |
本研究では「気がきく」ことの機能的メカニズムを認知神経心理学的観点から解明することを目的とし、1.「気がきく」ことの評価課題の作成、2.「気がきく」ことに生じる年齢差の検討、3.「気がきく」ことと展望記憶との関連性の検討、の3つのサブテーマを設定した。本研究では「気がきく」ことを、場面に現れる『サイン』に気がつき、『サイン』に対応する『行為』を想起し、その『行為』をプランし、タイミングよく実行できること、と定義した。 本年度は、これまでの研究の総括を行うため、まず、「気がきく」ことの構成概念について検討した。結果、「気がきく」ことは、「集団内でのファシリテーション力」「他者肯定」「計画管理」の3因子から構成されることが確認された。 次に、「気がきく」ことの機能的メカニズムについて更なる検討を行うため、「集団内でのファシリテーション力」「他者肯定」「計画管理」の3因子20項目から構成される気がきく尺度と別の尺度との関連を検討した。気がきく尺度や社会的スキルに関する尺度:KiSS-18(菊池, 2007)、日常の失敗傾向尺度(山田, 1999)などへの回答を求め、相関分析を行った結果、気がきく尺度の総得点とKiSS-18得点との間に有意な正の相関(r = .714)が、失敗傾向尺度の総得点との間に有意な負の相関(r = -.401)が認められた。また、気がきく尺度の下位因子である「集団内でのファシリテーション力」や「他者肯定」の得点とKiSS-18得点との間に有意な正の相関(それぞれ、r = .756, r = .468)が認められた結果から、これらの因子は対人関係を円滑にするスキルや他者から肯定的な反応を得られるスキルを反映していると考えられた。また、失敗傾向尺度との関連から、「気がきく」人は日常生活における失敗傾向が低い可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
最終年度となる本年度は、これまでの研究の総括を行った。本研究では、1.「気がきく」ことの評価課題の作成、2.「気がきく」ことに生じる年齢差の検討、3.「気がきく」ことと展望記憶との関連性の検討、の3つのサブテーマを設定し、「気がきく」ことの機能的メカニズムを認知神経心理学的観点から解明することを目的に、研究を進めてきた。 各サブテーマの目的を達成するために必要となるデータ収集はおおむね完了しているため、「気がきく」ことの機能的メカニズムの解明については、順調に進展している。 一方、「気がきく」ことの加齢変化については、平成25年度末の実施を目指して準備、調整を進めていた高齢者を対象とした大規模な質問紙調査(400名程度を予定)が平成26年度の実施となったため、この点については十分な検討を行うことができなかった。 これらの理由により、当初研究計画に対してはおおむね順調に進展しているものの、本研究課題を実施中に生じた課題を解決するといった点において、やや遅れが生じている。 そこで高齢者を対象とした大規模な質問紙調査を実施し、「気がきく」ことの加齢変化について更なる検討を加えるため、本研究課題の補助事業期間を延長することとした。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の補助事業期間を平成26年度まで延長することとした。 平成26年度は、平成25年度中に実施を予定していた高齢者対象の大規模な質問紙調査を実施する予定である。また、質問紙調査と並行して実施する予定であったPCベースの認知課題を用いた実験室実験を実施する予定である。 また論文投稿をはじめ、研究成果の公表を行っていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成26年1月末に予定していた気がきく尺度を用いた高齢者対象の大規模な質問紙調査(400名程度を予定)の実施が、平成26年6月に変更となった。そのため、質問紙調査と並行して実施する予定であったPCベースの認知課題を用いた実験室実験の実施も延期することとなった。結果、質問紙調査にかかる郵送費や人件費、実験室実験の実験参加者や実験補助者への謝金等の支出がなくなり、未使用額が生じた。 そこで平成26年度まで本研究課題の補助事業期間を延長し、未使用額を次年度に繰り越すことによって、これらの調査及び実験を実施することとした。 本年度の未使用額は、平成26年度に繰り越すこととした。平成26年度は、高齢者を対象とした質問紙調査にかかる郵送費や人件費、PCベースの認知課題を用いた実験室実験を実施する際の実験参加者や実験補助者への謝金等を支出する予定である。 また、簡易型刺激提示装置を実験室実験用に追加購入し、実験効率の向上をはかる予定である。
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