2011 Fiscal Year Research-status Report
ベルンシュタイン多項式による密度推定法の統計理論とその応用に関する研究
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23500339
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
柿沢 佳秀 北海道大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (30281778)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 密度推定 / 境界バイアス / ノンパラメトリック / 平滑化パラメータ |
Research Abstract |
本研究の主たるキーワードは『ベルンシュタイン多項式』であるが、広い意味で統計科学のカテゴリーの1つである『ノンパラメトリックな関数推定』を理論面及び実用面から追求することを目的とする。23年度は、密度関数をノンパラメトリックに推定する際に漸近バイアスと漸近分散とのトレードオフ関係を制御する役割をもつ平滑化パラメータの数学的なオーダー条件を課すことで、まず (1)従来のベルンシュタイン密度推定量のバイアスを定数aの導入から加法的に修正することで漸近性能を改良するという先行研究を詳細に検討し、a=2の選択の最適性を示した。しかし、この加法的なバイアス修正では推定量の非負性が失われるため、 (2)積型の修正を2つ取り上げ(TS型とJLN型)、それらの漸近性能も調べた結果から、TS型の振る舞いは加法型と類似しており、その定義に現れる定数aはやはりa=2で最適になることが分った。また、得られた結果を部分的に検証するため予備的な実データ分析を行った。(1)(2)では『ベルンシュタイン密度推定法』を採用したが、それらの結果は他の境界バイアスのない密度推定法でも適用可能であると予想して、さらに (3)『ベータカーネル密度推定法及びガンマカーネル密度推定法』に対応するバイアス改良を3種類考察した。この場合には加法型とTS型の積型修正ではa→1とした極限において最適性が示され、このことから新しい密度推定量を4つ提案するに至った。このような性質は研究過程において、できる限り一般的な密度推定量の満たすべき十分条件を考察した後、その条件を3例について確認することで得られているから、今後その他の密度推定量も追加検討するための準備として、関連する密度推定法の文献調査を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)従来のベルンシュタイン密度推定量のバイアスを定数aの導入から加法的に修正することで漸近性能を改良するという先行研究もあるが、そこではaの選択について議論されておらず、a=2の選択を理論的に示すために、研究代表者の成果(Kakizawa(2004))を拡張した補題も証明した。さらに加法型修正は非負性を犠牲にする欠点があるのに対して、積型の非負推定量を2つ提示し、その漸近性能解明にも成功しており、現在そのような成果を専門雑誌へ投稿するための準備をしている。 (2)ベルンシュタイン法では平滑化パラメータが多項式次数な整数に制限されたため上記の定数aも整数でなければならず、その結果a=2を誘導するが、ベータカーネル法とガンマカーネル法ではa→1という結果を導くことも分かっている。文献調査したところ、対応する現象は通常のカーネル法で正規カーネルを用いたときにも見られるものの、境界問題では独創的である。またベルンシュタイン法・ベータカーネル法・ガンマカーネル法以外に他の推定法が文献に提案されており、それらを研究対象に含めるために十分な文献調査を行い、それらの研究着手の準備がおおむね整った。 (3)(1)(2)に際し、提案された推定量毎の個別的な検討に留まらず、一般的な推定量の定式化をし、その枠組みの中で一般論を構築することを念頭にしている。なお、未だ完成形とは言えないが、既にそのような枠組みの概要について全国学会及び研究集会において経過報告をしている。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)23年度、従来のベルンシュタイン密度推定量のバイアスを定数aの導入から加法型及びTS-積型に修正することで漸近性能を改良し、さらにa=2の選択の最適性を示すことができているが、この漸近理論をシミュレーション実験で確認できる見込みがあり、24年度早期に専門的雑誌に投稿する。ベルンシュタイン法では平滑化パラメータが多項式次数な整数に制限されたため、定数aも整数でなければならず、その結果a=2を誘導するが、ベータカーネル法とガンマカーネル法ではa→1という結果を導くことも分かっており、この種の成果を23年度にて文献調査した他の推定法へも適用可能であるかどうかを検討して、それらを24年度中に専門雑誌へ投稿する。 (2)提案された推定量毎の個別的な検討に留まらずに、一般的な推定量の定式化をして、その枠組みの中で一般論を構築する。 (3)(2)の中には、数学の関数近似理論の基礎研究も含まれる。例えば、Gal(2009)の文献リストから「ベルンシュタイン近似法の一般化」の数学研究を実施することで、統計科学の立場でみれば付随する推定量の漸近バイアス公式の導出とその誤差評価を意味するため、後は対応する漸近分散とのトレードオフ関係の研究を進めていくことにより、新しい推定法の漸近性能が明らかにされる。 (4)諸結果が得られたとき、実データ解析に耐えうる理論整備とその実装も目指して数値実験と予備的な実データ解析を実施し、数値的傾向から示唆された見地を理論研究へフィードバックさせる。 (5)学会・研究集会・ワークショップに参加・発表して関連領域の最先端の研究動向を掴み、他研究者と意見交換をし、他研究者からの意見を求めることを経て、研究の質を高めていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
未使用分はプリンタ用のトナーの残量から逆算し、また、洋書の納品が遅れる見込みがあることからキャンセルし、次年度にトナー、及び、その洋書を購入することにしたため発生した。 本研究は統計科学の中でも「ノンパラメトリック推定」のカテゴリーに属する。国内では過去数年連続してその話題を対象とする研究集会『ノンパラメトリック統計解析とベイズ統計』が3月に開催され、24年度末にそのシリーズの第14回が開催予定(おそらく京都近辺)なので、専門家の集う場で本研究の成果報告をして関連研究者との交流をもつ。また、統計科学・統計数学に関連する学会(日本数学会・統計数学分科会と統計関連学会連合大会)が3回開催され、研究成果を報告する機会となるが、北大で開催されるものを除き、9月(九大)と3月(京大)で開催されることが決定されており、その他に、時系列解析・多変量解析・確率過程・生物統計・医学統計・計量経済学・金融工学・心理学などの統計科学の関連分野からトピックを絞った研究集会が国内で開催されるので、それらから情報を収集することも重要であると考えて、予算の大部分をそれらの研究集会への参加旅費・研究成果報告旅費、ならびに、それらの関連図書を購入するために使用する。なお、関連図書には数学諸分野からの専門書も含む。 本研究は統計科学における数学的基礎研究は勿論のこと実データ解析に耐えうる理論整備とその実装も目指すので、数値計算は不可欠である。現在までに計算を実施しているコンピュータ環境は32bit版であるので、最近のCPU性能の向上による計算時間の短縮と数値実験の質の向上を見込んで、64bit PCを購入し、併せて64bit対応の数式処理ソフトウェア、及び、コンパイラも購入する。
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Research Products
(3 results)