2011 Fiscal Year Research-status Report
心理的バイアスを考慮した意思決定問題に関する計算モデルの開発とその応用
Project/Area Number |
23500342
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
庄司 功 筑波大学, システム情報系, 教授 (20282329)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 意時点間最適意思決定問題 / 損失回避 / リスク回避 / 双曲型割引 |
Research Abstract |
平成23年は、異時点間最適意思決定問題として、n-期間最適配当金分配問題を考えた。即ち、意思決定者である投資会社が、投資家から資金を募り、その資金をもとに株価指数や債券指数に投資して、定期的に投資家に分配金を払い、最終期には全ての投資額を投資家に還元するという問題である。ここでは、株価指数や債券指数が確率的に変動すると仮定し、これが将来の不確実性をもたらす要因として考える。一方、投資家には、近視眼的な利益追求、loss averseやリスク許容度の違いといった心理的なバイアスがあると仮定した。投資会社はこうした心理的バイアスを考慮しながら、各期においてどれくらい分配金を支払うことが、投資家にとって最も好ましいかを最適化の問題として考えた。このn-期間最適配当金分配問題のもとで、投資家の近視眼的な利益追求を、双曲型割引としてモデル化した。これには2つのパラメータを使った擬似双曲型も知られているが、理論的整合性を保つには、双曲型割引が良いと判断した。また、Tversky and Kahneman (1991)の提唱するプロスペクト理論の価値関数によってloss averseとリスク許容度の違いをモデル化した。これらは一般に非線形関数であらわす必要があるが、非線形関数の最適化は計算効率が悪いため、本研究では、非線形関数を局所的に線形近似した区分的線形関数を導入した。最適化問題では、この価値関数をもとに、双曲型割引を適用して得られる期待価値関数を目的関数として設定し、この一連の計算過程を実行する計算アルゴリズムを開発した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通りに研究が進んでいると判断する。計算アルゴリズムは開発が終わり、数学的な問題もほぼ解決するめどが立ったので、次年度以降も計画通りに進むものと思われる。問題があるとすれば数値計算にかかる時間かもしれない。
|
Strategy for Future Research Activity |
H23年度にアルゴリズムについては開発が終わり、従来の方法よりもかなり計算時間の短縮化が図られたが、数値実験を効率的に行うには更に計算時間を短縮する必要があり、より処理速度が速く、並列処理が可能な計算機を導入する必要があると考えられる。この点についてはH24年度に検討する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ワークステーションの導入が予想より安価で行えたため繰越金が発生したが、H24年度は繰越金と合わせて新たな計算機の導入を検討する。
|