2013 Fiscal Year Annual Research Report
心理的バイアスを考慮した意思決定問題に関する計算モデルの開発とその応用
Project/Area Number |
23500342
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
庄司 功 筑波大学, システム情報系, 教授 (20282329)
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Keywords | 行動計量分析 / 異時点間最適分配問題 / 近視眼的利得追求 / プロスペクト理論 / 投資信託 |
Research Abstract |
人の意思決定には、心理的なバイアスが大きな影響を及ぼしていることが、様々な実験結果から知られるようになってきている。そこで、これらのバイアスが、どのようなメカニズムを通じて意思決定に影響を及ぼしているかを解明することが重要となる。本研究では、異時点間最適分配問題という意思決定問題を設定し、これに対して、近視眼的な利得追求、損失回避、異なるリスク許容度という3つの心理的バイアスを取り上げ、これらが最適分配問題にどのような影響を及ぼしているかをシミュレーション通じて数値的に解析した。 この数値解析には、最適分配問題の数値解を導くアルゴリズムを構成する必要があるが、本研究では実行可能なアルゴリズムを提案し、その解の存在と一意性について理論的な結果を得ることができた。このアルゴリズムを用いて、近視眼的な利得追求、損失回避、異なるリスク許容度という3つの心理的バイアスが、異時点間最適分配問題に及ぼす影響を調べることになったが、ここでは投資信託の配当金分配問題という具体例を取り上げ、どのような分配のあり方が投資家にとって最適になるかを評価した。 それによれば、途中に分配金を支払うことも、こうした心理的バイアスを持った投資家には最適になることが明らかになった。そもそも、こうした分配金の支払いは、従来の理論では非合理的であるとされていたが、本研究のフレームワークでは、従来では非合理とされた戦略でも、心理的なバイアスの存在下では合理的な戦略であり得る事を示すことができ、最適分配のあり方に対して新たな知見を提供することができた。
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