2011 Fiscal Year Research-status Report
離散観測される確率場における分布理論の開発とその空間統計学への応用
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23500353
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
二宮 嘉行 九州大学, マス・フォア・インダストリ研究所, 准教授 (50343330)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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Keywords | 確率値 / QTL 解析 / ゲノム科学 / 正規確率場 / 多重検定 / 超過確率 / 統計的漸近理論 / 微分幾何 |
Research Abstract |
離散観測される正規確率場の超過確率(互いに相関をもつ正規確率変数の最大値の裾確率)を評価する Taylor et al. (2007) の方法と Ninomiya and Fujisawa (2008) の方法を融合して超過確率の新しい評価方法を与えることについて,理論上どのような相関構造をもつ正規確率場にも対応できるような完成形を与えた.これにより,実際に精度のよい評価を与えるかどうかは別にして,空間統計学における集積性検出・信号検出・ホットスポット検出やゲノム科学における QTL 検出などを目的とする検定問題の確率値を与えられるようにした.そして,実際にそれを遺伝的不適合が観測されるマウスにおける関連遺伝子探索のための QTL 解析に応用した.具体的には,位置情報のあるマーカーにおける遺伝型がわかっているマウスに対し,遺伝的不適合に関連する遺伝子の存在を検証するための検定問題を構築した.関連遺伝子の位置を未知とするのは当然のこと,優性効果のタイプも未知としたため,検定問題は相関が高くかつ個数の大きい多重検定問題として定式化される.ただし,マーカーの位置はわかっているため,また優性効果のタイプの候補は定めているため,多重検定間の相関構造は導出可能である.これより,この多重検定問題の確率値は離散観測される正規確率場の超過確率で評価できることになり,実際にその評価式を新しい方法で与えた.そして,二つの関連遺伝子を検出することに成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画の第一段階として,離散観測される正規確率場の超過確率に対する新しい評価方法の完成形を与えることができた.これができなければ,拡張・一般化して各種応用問題に適用するといった今後の計画を遂行できないわけであり,その意味で順調に計画は進んでいるといえる.また,空間統計学への応用ではないものの,やはり現代の重要課題であるゲノム科学への応用をおこなっており,新しい方法の有用性を確認している.実際,既存の方法では一つしか見つからない関連遺伝子を,新しい方法により二つ見つけることに成功している.このような応用例を空間統計学の分野でも生み出すことができたならば,区分を「当初の計画以上に進展している」とできたと思っている.
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Strategy for Future Research Activity |
研究実績の概要でも述べたように,理論上どのような相関構造をもつ正規確率場に対しても,新しい方法は超過確率を評価することができるが,実際に精度のよい評価を与えるかどうかは別である.そこで,空間統計学における集積性検出・信号検出・ホットスポット検出や複雑な設定下での QTL 検出のための多重検定問題に対して方法を適用することにより,どのような場合に確率値評価の精度が低下するかを調べ,それを克服するように方法をカスタマイズするつもりである.その際,評価の精度を上げるため,新しい方法に位相幾何アプローチあるいは微分幾何アプローチを組み合わせることも考えていく予定である.そして各応用分野で使われるような汎用性の高いものに仕上げていくことを目指していく.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
新しい方法に位相幾何アプローチあるいは微分幾何アプローチを組み合わせることを推進するための国外研究者(特にスタンフォード大学の Jonathan Taylor 教授)との協働,応用上価値の高い研究をするための国内研究者との交流,提案方法の質向上や宣伝のための国内・国外を問わない成果発表を予定している(国外旅費:400千円,国内旅費:240千円).また,応用分野に適用するためにはその分野を学ぶ必要があり,また手法発展のためには積分幾何・位相幾何を学ぶ必要があり,多くの書籍を購入するつもりである(洋書:75千円,和書:25千円).さらに,提案方法をソフト化・パッケージ化し,それをウェブ公開するために業者を利用することを考えている(開発費用:100千円).
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