2013 Fiscal Year Research-status Report
離散観測される確率場における分布理論の開発とその空間統計学への応用
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23500353
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
二宮 嘉行 九州大学, マス・フォア・インダストリ研究所, 准教授 (50343330)
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Keywords | 確率値 / ゲノム科学 / 検出力 / ステップダウン法 / 正規確率場 / 多重検定方式 / 対比較 / 統計的漸近理論 |
Research Abstract |
グループ間の多次元データの平均を比較するという基本的な多重検定問題において,多次元データの相関が未知である設定を考える.このとき,必ずしも一致推定量にはならない統計量,具体的にはある種の標本疑似相関を相関に代入して用いることにより,多重検定のサイズを漸近的にコントロールしつつ検出力を上げる,というアイディアを得たのが前年度である.これに対し,アイディアを精錬させて手法の完成形を与えた後,数値実験を通して手法の有用性を示し,実データ解析に手法を適用したのが当該年度の成果といえる.具体的には,標本疑似相関のあるクラスの中で,ある種の最適性を満たすようなものを与え,それを実際に代入して用いるときに生じる数値計算上の問題を克服した.また,検出力を上げる既存手法であるステップダウン法と組み合わせ,さらなる検出力向上を達成した.数値実験では既存手法と比較し,常に検出力を上げることともに,設定によってはステップダウン法によるゲインとは比較にならないほどのゲインがあることを示した.実データ解析では,コントロールマウスとその染色体の一本を別のマウスのものと入れ替えたコンソミックマウスに対し,身長や体重などの特徴量を比較する多重検定問題を扱った.この問題に対する過去の研究では相関の利用すら行われていなかったため,既存手法の適用のみで47個の検定を新たに棄却することになったが,本手法の適用でさらに13個の検定を棄却することに成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
相関のある多重検定問題における確率値はいわゆる離散観測される確率場の最大値の裾確率であり,その確率値を評価する新手法を構築したことは本研究課題における進展とみなせる.現時点では新手法をゲノム科学の問題に適用しており,空間統計学への応用を進めたわけではないが,新手法は極めて基本的な多重検定問題に対するものであり,多重検定を必要とするどの分野に対しても有用であると考える.例えば空間統計学の分野でいえば,ある時点である領域の構造が変わるような時空間データの構造変化モデルにおいて,変化の有無を調べる検定問題は空間相関が未知ならばこの手法の適用範囲内にある.実際に需要のあるこの問題への適用まで進んでいれば,区分を「当初の計画以上に進展している」にできたと考える.
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Strategy for Future Research Activity |
まずは,5月中に初稿を完成させて6月中に投稿するというスケジュールで,当該年度に完成させた研究内容の論文化を行う.その後,構築した手法の空間統計学への適用に取り組む予定である.具体的には,血流を測った脳画像の時系列データにおいて,ある時点でどこかの領域の速度が変化したか否かを調べる変化検出問題を扱うつもりである.各画素ごとに変化したか否かを調べる検定を考えれば,問題は多重検定として定式化される.画像データは未知の空間相関を有するため,構築した手法を適用することが可能であるし,適用すれば検出力が上がることが見込まれる.この変化検出問題は,別件での共同研究者であるイギリスの統計学者が抱える問題であり,交流を強化することで実現を目指す.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
空間統計学(脳画像解析)への応用を始めることより手法を完成させることを優先させたため,国外研究者との交流を目的とした海外出張と,大規模な数値実験を行うための最新のパーソナルコンピュータの購入とを控えたことによる. 当該年度に構築した手法に対する議論を求めた国内外での成果発表,空間統計学(脳画像解析)への応用を目的とした国内外研究者との交流を予定している(国外旅費:300千円,国内旅費:240千円).ちなみに,東京で行われる日本応用統計学会における成果発表の申し込みは既に終えている.また,脳画像解析を見据えた数値実験は大規模なものとなることが見込まれるため,最新のパーソナルコンピュータを購入する予定である(400千円).それ以外では,書籍や謝金などで使用することを計画している(書籍:80千円,謝金:80千円).
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Research Products
(7 results)