2014 Fiscal Year Research-status Report
離散観測される確率場における分布理論の開発とその空間統計学への応用
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23500353
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
二宮 嘉行 九州大学, マス・フォア・インダストリ研究所, 准教授 (50343330)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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Keywords | 画像解析 / 関数データ解析 / 情報量規準 / 正規確率場 / 正則化法 / 統計的漸近理論 / 変化点解析 / ホットスポット |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題に関して進んだ研究は,主に「関数データの変化点解析における情報量規準の導出」と「領域ごとに構造の複雑度が異なるデータに対する正則化法の開発」の二つである.通常のパラメトリック解析と異なり,関数データ解析では真の分布が仮定したモデルに属することを仮定せず,ある特殊な構造を仮定する.その仮定ゆえに変化点モデルに対して Ninomiya (2014) で導かれた AIC を用いることができないため,代わりに Cp 基準を漸近理論に基づいて評価したのが前者の研究である.これにより,変化点数の推定をおこなうことができる.評価のテクニックは Ninomiya (2014) におけるそれと同様のものだが,得られた情報量規準の形は Ninomiya (2014) におけるそれからは想像できないものとなっている.現在は数値実験により性能を評価している段階である.一方,構造の複雑度に応じて正則化パラメータの値を変動させる,という新しいタイプの正則化法を提案したのが後者の研究である.そして,そこに現れる(ハイパー)チューニングパラメータの選択のため,ある適当な漸近論に基づいて情報量規準を導いている.回帰分析あるいは判別分析において,場所によって回帰曲面あるいは判別境界の滑らかさが異なると,通常の正則化法では過適合または適合不足となる場所が生じてしまう傾向があるが,提案手法はその回避を目的としている.そしてその目的を果たすことを数値実験で確認し,さらに実データ解析をおこない,現在二編の論文が投稿直前の段階に至っている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度は,研究の幅を広げるため,昨年度までとはやや異なる方向での研究を行った.とはいえ,本研究テーマに沿った研究であることはもちろんのことである.「関数データの変化点解析」の動機は,脳画像という確率場ににおける血流変化の検出であり,変化を特徴付けるパラメータの推定量に関する特殊な漸近分布論に基づいて情報量規準を導いている.「領域ごとに構造の複雑度が異なる場合の正則化法」においても動機の一つは画像解析におけるノイズ除去であり,実際に簡単な例で適用を試している.二つの新しい研究テーマをほぼ完成形まで与えることができたので,「おおむね順調に進展している」といってよいと考える.昨年度までの研究成果について,世間一般に認めてもらおうと考えすぎて論文出版が遅れていることが,「当初の計画以上に進展している」としなかった理由である.
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Strategy for Future Research Activity |
まずは,昨年度までの成果と当該年度の成果をともに論文の形で出版することを優先課題とする.また,成果を統計ソフトのパッケージとして公開することも課題とする.新しい研究テーマとしては,分散不均一の時系列モデルの基本である ARCH モデルに対し,構造変化を検出するためのモデル選択法を構築するすることを考える.これは,ある疾病をもつ脳波の時空間データにおいて,脳波が単なる分散不均一モデルにしたがっているのか構造変化をもつのかを調べたいという,メルボルン大学の研究者からの依頼に応えるためのものである.Ninomiya (2014) を拡張することによりなんらかの成果は得られるはずであり,それをもとにその研究者と交流を継続し,医療画像解析分野での本質的な貢献を目指す.
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Causes of Carryover |
どのような応用分野に対しても有用となりうるような,汎用性の高い方法論を作ることに当該年度は注力した.それを各応用分野で活かすために方法をカスタマイズする,ということの方に次年度は注力する予定である.そのためには国内・国外問わずさまざまな研究者と交流する必要があり,それが次年度使用額を生じさせた理由である.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当該年度までに開発した手法を議論により強化するための国内外での成果発表,各分野への応用を目指して手法をカスタマイズするための国内外研究者との交流を予定している(国外旅費:300千円,国内旅費:200千円).また,各分野に応用するためには大規模な数値実験が必須となるため,最新のパーソナルコンピュータを購入する予定である(350千円).それ以外では,書籍や謝金などで使用することを計画している(書籍:35千円,謝金:30千円).
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Research Products
(6 results)