2011 Fiscal Year Research-status Report
欠測値を含む高次元データに対するいくつかの多変量統計的推測法の開発とその応用
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23500360
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
瀬尾 隆 東京理科大学, 理学部, 教授 (00266909)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 統計数学 / 統計科学 / 統計理論 / 多変量解析 / 漸近理論 |
Research Abstract |
多次元データが一部分欠損しているような欠測値データの下での統計的推測理論の構築および統計的検定法の開発を行うことは重要な問題の一つである.また,高次元データにおける統計解析理論についても実用的な統計的手法を開発することは重要である.本研究では,データが欠測値をもつ場合や高次元データである場合の統計的推測理論の構築と統計的検定法の開発を行うことを目的とし,その有効性・実用性について研究を行った.本年度は,以下の点について研究成果を得た. 1.観測ベクトルの成分が一部分欠損している2ステップ単調欠測データの下で,1標本問題における平均ベクトルの検定法として,尤度比検定によるものとホテリング型統計量によるものを与え,それらの帰無分布の近似について議論し,良い近似法を開発した.研究成果は論文としてまとめ,学術雑誌に投稿中である.さらに,この問題を2標本問題へと拡張し,同様な結果を導出することに成功した. 2.上述の議論をプロフィール分析問題に適用することを考え,2ステップ単調欠測データの下でプロフィール分析に対する尤度比検定統計量とホテリング型検定統計量の導出し,それらの帰無分布の漸近的評価を行った. 3.高次元データの下での判別分析および分散共分散行列に関する検定問題について,その検定法の開発と性質についていくつかの研究成果を与えた.さらに,母集団間に相関のある繰り返し測定データなどの平均ベクトルの検定統計量について,その帰無分布に対する漸近展開近似を楕円母集団のもとで導出し,非正規性の影響について調べた.また,関連する研究として,多次元データの非正規性検定についても議論し,いくつかの研究成果を得ることができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した欠測値データの下での平均ベクトルと分散共分散行列の検定,線形判別分析における誤判別確率の推定などはある程度計画通り進み,順調に研究成果を得ることができた.しかしながら,2つの母集団の分散共分散行列が異なる場合への拡張については,まだ研究途中であり,来年度以降の研究課題である.また,2標本問題の拡張となるより一般的なk標本問題について,いくつか結果を得ているが,最終チェックとまだ不十分な部分があり,今後の課題である.さらに,高次元データに対する分散共分散行列の推定および検定問題に対してもいくつかの成果を得ているが,不十分な部分があり,来年度に引き続いて研究を行う課題である.
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Strategy for Future Research Activity |
まず,平成23年度に得た2ステップ単調欠測データの下での2標本問題における平均ベクトルの検定法について研究成果をまとめるとともに,学術雑誌に投稿する. 次に,平成23年度に得た2標本問題に対する結果をより一般のk標本問題に拡張し,尤度比検定統計量を導出し,数値的評価をモンテカルロ・シミュレーション実験により検証する.さらに,平均ベクトルの多重比較法へと拡張する. また,並行して,分散共分散行列が異なる場合の2つの平均ベクトルの同等性検定について,漸近展開を駆使することにより,完全データの場合の先行研究による近似法を精度の良いものにし,欠測値データへの適用を試みる.さらに,プロフィール分析問題についても,2ステップ単調欠測データの下でのk標本問題における尤度比検定統計量とその帰無分布の導出を行う. さいごに,高次元データに対する分散共分散行列の構造に関する検定問題および判別分析に対する誤判別確率についての高次元漸近近似による区間推定を導出する. 補足として,平成23年度まで本研究室の大学院博士課程学生であった首藤信通君が,平成24年度より大分県立看護科学大学の助教として転出したことにより,平成24年度からは連携研究者として加わってもらい,本研究を円滑に遂行する計画である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度では,直接経費80万円を予定していたところ,60万円弱の支出となり,次年度使用額が20万円弱となった.理由は,東日本大震災の財源確保のために,交付額の減額変更の可能性があったこと,また,当初は交付決定額の70%の範囲内での執行依頼があったため,謝金(アルバイト料)および物品費の使用を使用計画よりも抑えたことにより,20万円弱の残高となった. 平成24年度は,物品費として,消耗品費(プリンタトナー代,論文別刷代,文具代など)を計上し,また,研究打合せ(情報収集)や研究成果などの発表のために,国内の学会(日本計算機統計学会(5月),統計関連学会連合大会(9月)),つくば国際会議場で開催される国際会議(IMS-APRM2012,7月),そして,ポーランドで開催される国際会議(LinStat2012,7月)に出席するための参加費・旅費を計上している. さらに,研究課題における統計計算の補助やシミュレーションなどのプログラム作成・数値実験を円滑に実行するために,卒研生・大学院生のアルバイト料を計上し,その他の経費として投稿論文原稿の英文校正費を計上する.また,連携研究者との研究打合せを行うための旅費も計上する. 以上の経費を翌年度に請求する研究費と合わせて使用する計画である.
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Research Products
(9 results)