2012 Fiscal Year Research-status Report
欠測値を含む高次元データに対するいくつかの多変量統計的推測法の開発とその応用
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23500360
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
瀬尾 隆 東京理科大学, 理学部, 教授 (00266909)
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Keywords | 統計数学 / 統計科学 / 統計理論 / 多変量解析 / 漸近理論 |
Research Abstract |
データが単調欠測である場合や高次元データである場合の統計的推測理論の構築とその統計的検定法の開発を行うことを目的として,本年度は以下の研究成果を得た. 1.平成23年度に本研究で得た2ステップ単調欠測データの下での1標本問題および2標本問題における平均ベクトルの検定についての成果を学術雑誌に投稿し,査読をうけ,採択・掲載された.さらに,この問題を一般のk標本問題に拡張し,平均ベクトル間の対比較に対する近似同時信頼区間を構成することに成功した. 2.上述の内容に関連して,2ステップ単調欠測データの下でのプロフィール分析に対する尤度比検定統計量とホテリング型検定統計量を与え,それらの近似帰無分布を導出した結果をまとめ,現在,学術雑誌に投稿中である.さらに,標本数よりも次元数の方が大きい場合の高次元大標本理論の下でのプロフィール分析についても議論し,平行性仮説検定問題に対する検定統計量の提案とその帰無分布に対する漸近展開の導出に成功した.ただし,この場合,データに欠測はなく,完全データの下での議論となっている. 3.その他の研究実績として,多変量正規性検定問題について,3次モーメントである多変量歪度と4次モーメントである多変量尖度を用いた検定統計量をいくつか提案し,その統計量の帰無分布を与え,さらに,高次元データの下での多群判別分析におけるモデル変数選択基準の提案や新たな修正線形判別分析などの議論を行い,いくつかの成果を得た.結果はすでに学術雑誌に掲載されている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した欠測値データの下での平均ベクトルの検定問題については,2ステップ単調欠測値の場合はある程度予定通りの研究成果が達成できたと思われるが,2ステップ単調欠測以上の3ステップやそれ以上の一般の場合については,研究途中であり,平成25年度の研究課題である.また,2つの母集団の分散共分散行列が異なる場合の平均ベクトルの検定やプロフィール分析への拡張については残された問題があるが,ある程度の成果を得ており順調に進展している. さらに,高次元データの下での判別分析に関する研究については,誤判別確率についての高次元漸近近似による区間推定の導出に成功し,順調に成果をあげることができた.また多変量正規性検定問題についてもいくつかの結果を得ることができ,順調に成果をあげており,今後も進めていく.
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Strategy for Future Research Activity |
まず,平成24年度に得た研究成果の中で,学術雑誌に投稿していない内容について,整理しまとめ,投稿する. 次に,2ステップをより一般化したmステップ単調欠測データの下での平均ベクトルと分散共分散行列の最尤推定量を議論している先行研究を参考にしながら,平均ベクトルの検定について,検定統計量の提案とその漸近分布について議論する. さらに,平成24年度に得たk標本問題における2ステップ単調欠測データの下での平均ベクトルの多重比較法のアイデアを対照比較に適用することを試み,mステップ単調欠測データへの拡張を行う.また,完全データの下での分散共分散行列が異なる平均ベクトルの検定問題について,平成24年度の研究の続きとして,これまでの成果を駆使して対立仮説の下での検定統計量の分布についても議論する. プロフィール分析問題については,平成24年度は2ステップ単調欠測データの下でと高次元データの下で議論してきたが,高次元データの下では,まだ不十分なところがあり,これまでに得た高次元データの下での理論展開を用いて,前年度に引き続き研究を進めていく. さいごに,高次元データに対する判別分析や多変量正規性検定問題における未解決な問題についても,これまでの成果をもとに引き続き研究を行っていく.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は,直接経費約90万円(前年度繰り越し金約20万円を含む)のところ,約83万円の支出となり,次年度繰り越し金は約7万円となった. 平成25年度の研究費の使用内訳としては,物品費(消耗品費)を計上し,また,研究打合せ(情報収集)や研究成果などの発表のために,国内の学会(日本計算機統計学会(5月),応用統計学会(5月),統計関連学会連合大会(9月)),カナダで開催される国際会議(IWMS2013,8月)に出席するための参加費・旅費を計上している. さらに,研究課題における統計計算の補助やシミュレーションなどのプログラム作成・数値実験を円滑に実行するために,大学院生のアルバイト料を計上し,その他の経費として投稿論文原稿の英文校正費を計上する. 以上の経費を翌年度に請求する研究費と合わせて使用する計画である.
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Research Products
(25 results)