2013 Fiscal Year Research-status Report
形状仮説および変化点仮説への2重累積和統計量に基づく総合的接近法とその様々な応用
Project/Area Number |
23500362
|
Research Institution | Meisei University |
Principal Investigator |
広津 千尋 明星大学, 連携研究センター, 主幹研究員 (60016730)
|
Keywords | 2元表プロファイル解析 / 2項分布系列 / 2重累積和 / 不等間隔時系列 / スロープ変化 / 凹性検定 / 用量反応曲線外挿 |
Research Abstract |
前年度までに行った独立なPoisson系列に対する凸性仮説に関する研究を、用量反応解析で多用される2項分布系列に拡張し、さらに1母数指数分布族全体に一般化する道筋を付けた。まず、凸性検定の完全類に属する統計量のうち、2重累積和に基づく規準化最大対比を取り上げ、帰無仮説の下での完備十分統計量の組を与えた同時分布を条件付き分布の積へ分解する理論を完成させた。とくに事象の生起する時間あるいは場所が不等間隔の場合を想定し、条件変数を満たす標本空間とその確率を逐次的に計算する効率の良い正確アルゴリズムを得た。逐次的に確率分布を構成する際には、等間隔では問題とならない、逐次変数に関する整数条件を確保するのに様々な工夫を行い、不等式の再構成を行っている。この確率分解定理により、通常困難とされる多重和分を効率よく計算する漸化公式が得られた。当初、研究は等間隔ポアソン時系列を対象として開始したが、今年度は、応用場面としてより一般に用量反応解析を想定したため、変化点推測と同時に適合度検定も対象とした。そこで新たに、適合度検定としてより高い検出力の期待される累積χ二乗統計量の理論を構成し、最大対比統計量との比較を行った。その結果、変化点推測としては最大対比統計量が優れ、適合度検定としては予想通り累積χ二乗統計量の優れることが確認出来た。さらに、これらの統計量の2元表データプロファイル解析への組み込みも行った。これらの成果は、別に記すように海外の国際会議および国内の統計関連学会連合大会その他で発表した他、応用統計学会誌の研究論文として掲載された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初、独立等間隔ポアソン時系列に関する形状制約および変化点仮説を対象として、2重累積和統計量の理論と応用を完成させた。さらに、今年度は2項分布用量反応曲線を対象として様々に発展させた。とくに応用の実態に即して、不等間隔の理論を発展させ、アルゴリズムの改良を行った。用量反応曲線の凹性は、反応曲線の極低用量への外挿に当たって極めて有用な情報である。この場合は、変化点推測より指向性適合度検定として検出力の高い方法が求められるため、従来の最大対比統計量に加えて累積χ二乗統計量の理論を発展させた。検出力の比較により、予想通り変化点検出には最大対比統計量が優れ、指向性適合度検定として累積χ二乗統計量の優れることが確認された。このように、対象分布をポアソン分布から2項分布に広げると共に、検定の完全類から示唆される2通りの統計量、最大対比型と累積χ二乗型、について理論を完成させ、ソフト化も行っており、おおむね順調に進展していると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度は新たに二つの課題に取り組む。第一は、本年度までの凹性仮説の研究を2 x 2 x K分割表に発展させる。前年度に理論は一般の指数分布族を対象に拡張しているが、本応用に当たって必要な特殊化を行い、ソフト化を完成させる。第二は新たにS字性仮説、および変曲点仮説検定の理論とソフト化に取り組む。統計量としては3重累積和、統計的性質としては3階マルコフ性を扱い、ソフト化は計算時間、記憶容量に関し細心の注意を要し、困難も予想される。しかしながら、前3年間の研究の蓄積を基に問題解決を図る。用量反応曲線の凹性は、リスクの信頼上限をデータの無い超低用量に外挿する際に不可欠な性質である。この場合、パラメトリックモデルは多大の誤差を蒙ることが知られている。もし、S字性検定によりS字性が検証されると、用量反応曲線全体では凹性が仮定出来ない場合でも、変曲点の下方では凹性が保証され、超低用量への外挿可能性が拡大する。統計量としては最大対比統計量と並行的に適合度検定として検出力の高いことが期待される二乗和統計量の研究を行う。前3年において作成した計算ソフトを利用するが、ここまで主として2次モーメントまでの計算が求められたのに対し、3次および4次モーメントの計算が必要になる。最後に、指数分布族に属する各分布に対して発展させてきた各種形状制約・変化点仮説のためのアルゴリズムを、出来るだけ使い易い形で世の中に提供する総合化の研究を行う。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本科研費では、形状制約と変化点仮説に対する総合的接近法として、2重累積和統計量の理論と応用に関する研究を進め、1母数指数分布族ではほぼ問題を解決出来ている。一方、2 x 2 x K分割表やS字性仮説等、派生する幾つかの問題に対し理論とソフト開発が未完であり、その研究成果発表費用とソフト開発謝金に未使用額が生じた。 このため、形状制約の多様化の研究とソフト開発を次年度に行うこととし、未使用額をその経費に充てることとする。研究成果発表は21st International Conference on Computational Statistics (2014年8月)と第11回統計関連学会連合大会(2014年9月)を予定する。とくに前者はジュネーブ開催で、渡航費用および登録料を要する。
|