2011 Fiscal Year Research-status Report
熱安定性計算による超好熱菌蛋白質の変性状態構造と耐熱化機構の解明
Project/Area Number |
23500366
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
斎藤 稔 弘前大学, 理工学研究科, 教授 (60196011)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 変性構造 / 熱安定性 / シミュレーション / 自由エネルギー計算 / 超好熱菌 |
Research Abstract |
蛋白質の変性状態の構造は、溶液中で大きく揺らいでおり観測が困難であるため、耐熱性を決定する重要な因子にもかかわらず、未だに明らかにされていない。本研究の目的は、申請者が培ってきた、任意パラメタを一切用いない熱安定性自由エネルギー計算法によって、変性状態の構造を予測することである。すなわち、熱安定性の実験結果を任意パラメタ無しで再現できるような、変性状態の構造モデルを構築することである。研究対象を、超好熱菌Tk-RNaseHIIに絞った。阪大の高野らは、Tk-RNaseHIIのすべてのIleとleuとをAlaに置換した熱安定性変化を実験で明らかにしている。本研究の成否は、蛋白質のシミュレーションによって、変性状態のモデル構造を可能な限り多く抽出すること、そして、それらに対して自由エネルギー変化量を可能な限り迅速に計算することにかかっている。23年度は、まず、Tk-RNaseHIIの天然状態の300Kでのシミュレーションを50ナノ秒まで延長して行った。天然状態の構造は、揺らぎが通常よりも大きいものの、水溶液中で安定に揺らいでいることが確認できた。次に、変成状態構造のモデルを抽出するために、高温(400Kと500K)のシミュレーションを、それぞれ60ナノ秒と30ナノ秒行った。意外なことに、400Kで60ナノ秒のシミュレーションを行っても、多くのヘリックス構造が保たれていた。したがって、400Kのシミュレーションからだけでなく、500Kのシミュレーションからも、モデル構造を抽出する必要が出てきた。一方、天然状態のアミノ酸置換(Ile,Leu->Ala)に伴う自由エネルギー変化の計算は、順調に実施できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の成否は、蛋白質のシミュレーションによって、変性状態のモデル構造を可能な限り多く抽出すること、そして、それらに対して自由エネルギー変化量を可能な限り迅速に計算することにかかっている。すなわち、蛋白質の分子動力学シミュレーションに最も多くの時間がかかる。申請者が開発したソフトウエアCOSMOS90を、共同利用のスーパーコンピュータ上で高度に並列化し、シミュレーションを高速にできるようにしている。共同利用のスーパーコンピュータとして、計算科学研究センター(岡崎)のPrimequestを使ってきたが、それが2月以降使えなくなり別なマシン(Primergy)にリプレイスされた。このマシンは、ディスクIOの性能が悪く、自由エネルギー計算にかえって時間がかかるようになった。ソフトウエアを改良することによって回避する計画である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究には、シミュレーションをするためのソフトウエアとスーパーコンピュータの利用が必要不可欠である。ソフトウエアは、申請者自身が開発したものであり自由に改良できるため問題はない。一方、スーパーコンピュータは、共同利用のものを使っているため、マシンのリプレイスや運用環境の変化によって、研究の進展に影響する。一方、神戸の京を含む、国内のスーパーコンピュータの新しい共同利用システム(HPCI)が24年度から発足する。24年度には、このシステムを利用して、計算を効率化する計画である。そのために、申請方法や利用方法の説明会に積極的に参加する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
24年度の研究費の利用計画に大きな変更は無いが、研究旅費の使い道として、新しいスーパーコンピュータの利用申請方法や利用方法などの説明会への参加が増える。
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