2012 Fiscal Year Research-status Report
癌放射線治療の線量時間効果関係を表す時間組込一般直線2次モデルの確立と応用
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23500369
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
関根 広 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (40187852)
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Keywords | 放射線治療 / 分割照射 / 直線2次モデル / 一般直線2次モデル / 乳房放射線照射 / 皮膚紅斑 |
Research Abstract |
放射照射(分割照射)に伴う皮膚紅斑における皮膚色の変化を分光測色計により測定した結果、L*a*b*表色系による皮膚色の変化を定量的に表すことができた。皮膚色の変化をコンピュータ上で明示的に表すためL*a*b*表色系からHSB表色系(色相、彩度、明度)へ変換すると、HSBの3因子の変化がGLQモデル(一般直線2次モデル)で独立変数として表せることがわかった。乳房への接線照射を表すために、照射乳房を関数でシミュレーションして関数表面に時間的な色変化を載せた。この結果は昨年発表したが、照射野のみの色変化のため、非照射部位との色の差が明示的に不明確なため、関数的に女性の上半身の体輪郭を表すことを試み、患側乳房への照射と非照射側乳房を同時に表すことが可能になった。また、HSBの3次元的変化グラフと3Dをリンクさせることでより明示的に示すことができた。得られた結果は次年度のHPへアップロードを行う(http://www.radbiolog.jp/)。ここで作製したMathematica fileをQuickTime形式に保存し、iTunesへコピーすることでiPad, iPad mini, iPhoneで閲覧することができ、患者さんへ説明することに利用している。数名の同僚に使用感を聞いたが、好評である。 また、本研究に関連する研究者は欧米の方が我が国より圧倒的に人数が多いため、平成24年は上記HPを英訳して、英語ページを併設し、海外からのアクセスを期待している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
時間因子を組み込んだ一般直線2次モデル(GLQ model)を作製し、分割照射の線量-時間-効果関係が合理的に表せることを検証した。また、分割照射により経時的に分裂死により細胞死を遂げることを2次元で表わせることを、ボロノイ図を用いて示した。次に、近年普及している体幹部への定位照射では、大線量を短期間に照射する方法である。この治療を単純なLQモデルを当てはめると、治療時間因子が変数としてないため、時間間隔の変動によらず同じ生物学的治療効果となるという、臨床とは矛盾する結果になる。本研究で開発したGLQモデルを当てはめると、治療間隔(治療期間)を変えることで、照射効果が異なることを2次元グラフおよび、3次元空間でのシミュレーションで示すことができた。 分割照射の正常組織反応もGLQモデルで解析できる可能性がある。乳房温存術後の放射線分割照射での皮膚紅斑の皮膚色の変化を分光測色計で経時的に測定した。L*a*b*表色系で得られた結果をHSB(色相、彩度、明度)に変換し、各独立変数(H,S,B)のGLQモデルを非線形回帰により求めた。その結果を乳房の形状の3次元表面に再現することで、皮膚紅斑の推移を明示的に明らかにできた。この結果は時間軸で動く動的モデルのため、論文化するよりコンピューターグラフィックをリアルに見てもらう方がインパクトを強く与えると考え、ホームページを開設した(http://www.radbiolog.jp/)。LQモデルに時間因子を組み込む試みは欧米でも試みられているが、いずれもリアルタイムの時間変化を表すことはできていない。そこで、本研究を欧米でも閲覧してもらうように、ホームページの英語版を作製した。
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Strategy for Future Research Activity |
GLQモデルの精度の向上と普遍化に向けた研究を行う。 かつて、分割照射の線量投与法のバイブル的存在であったTDF表は、現代の高精度化された放射線治療では歴史的存在になっている感がある。本研究で開発したGLQモデルは分割照射における腫瘍および正常組織の反応の表現形(phenotype)の経時的変化を表すことで、時間―線量―分割関係を明示的に示すことを研究してきた。そこで、本研究で開発したGLQモデルが現代の高精度化された放射線治療の最適化モデルとして適応できるように、TDFに相当する時間-線量-分割関係の作表を目指して研究する。 また、このような研究は、放射線治療医に役立つのみならず、患者さんへも還元できれば最高である。そこで、本研究が患者へ還元できることを指向して推進する。 以上の研究成果を発表する場として様々な方法を考えている。一つにはすでに立ち上げたホームページを更に更新すること。また、国内および国外の学会で発表することである。タブレットへダウンロードし、患者さんへの説明に用いること。本研究の論文化は動的シミュレーションのため難しいが、方法を考えて行いたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
乳癌に対する乳房温存放射線治療の皮膚紅斑のコンピューターシミュレーションを作製したが、照射乳房のみのシミュレーションのため背景の非照射部位との対比が困難である。そこで、女性の上半身の3D体輪郭を関数で表し、照射乳房と非照射乳房の対比を試みる。この結果をホームページにアップロードする。ここで、作製したプログラムの結果をQuickTime形式で保存し、iTunesにコピーすることで、PC (Mac, Windows)で閲覧可能である。また、iPad, iPad mini, iPhoneとPCを同期することで、これらのデバイスで再現でき、外来等で患者さんと供覧可能である。本研究に興味を持つ放射線治療医へ、ファイルを提供し、患者さんへの説明に使用してもらい、使用感をフィードバックしてもらう予定である。 以上とは別に、多中心性に増殖した腫瘍は放射線分割照射後の反応が部位によって異なることが多い。そこで、ランダムに1-9個の多中心を発生させ、各々の腫瘍塊の放射線感受性も実験腫瘍の異なる感受性パラメーターを与えて、GLQモデルにより分割照射の線量時間効果を経時的変化として表すことを行う。さらに、3次元空間に再現することで、実際の生体内での変化が再現できるかを検討する。
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Research Products
(6 results)