2013 Fiscal Year Research-status Report
癌放射線治療の線量時間効果関係を表す時間組込一般直線2次モデルの確立と応用
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23500369
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
関根 広 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (40187852)
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Keywords | 放射線治療 / 時間線量分割関係 / LQモデル / GLQモデル / 乳房温存療法 / 放射線影響 / 皮膚紅斑 / ボロノイ図 |
Research Abstract |
2013年度は GLQモデルを用いて不均一な放射線感受性をもつ腫瘍の時間線量分割関係の3Dシミュレーションを行った。 悪性腫瘍が体内で増殖するとき、amorphousな形状を示すことに注目した。 そこで、3次元空間に増殖する腫瘍形態を以下のように仮定した:1. 3次元空間に1個の癌細胞が発生して、自動自律的に3次元正規分布に従って周囲へ増殖する.2. 癌組織は複雑な形態を示し、しばしば多中心性に発生する.3. 多中心性に発生した癌組織の各塊の大きさは一様ではない.4. 多中心性に発生した癌組織の各塊の放射線感受性は異なる可能性がある. 以上をもとに、複雑な形状を示す癌組織をコンピュータ上に自動発生させ、その腫瘍に対して通常分割照射(60Gy/30回/6週)の放射線治療を行ったときの時間-生存率関係をグラフ化し、同時に3次元シミュレーションで同期させる。方法として:1. 3次元空間にランダムに1~9個のシード(癌幹細胞)を発生させる.2.シードの発生時期をランダムに与える.3.各シードは3次元正規分布に従って指数的に増殖する.4. 放射線感受性は異なった7種類の培養細胞の感受性がランダムに割り振られる.5.分割照射による効果はGLQモデルで与えられる. 以上をMathematica ver9.0.1でプログラムした。ホームページにアップロードするにあたり、腫瘍の幹細胞の数をランダムに発生できなかったために、事前に9個の幹細胞を発生させておき、プログラムを走らせるときに幹細胞の数を指定するようにした。今後は、CDFファイル上で、自動で幹細胞の数がランダムに与えられるようにする予定である。また、時間-生存率関係のグラフを同時に再現することは本年はできなかったが、今後同期させる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
放射線治療の局所効果を与える因子に時間-線量-分割関係がある。古くはこの関係を表す定量的指標としてNSD, TDFなどが頻用された。その後、培養細胞の実験から線量-生存率関係が得られ、線量効果関係が直線-2次式で表されることがわかった。LQモデルに数式的に分割回数を繰り返して分割照射のLQモデル(SF=Exp[-n(αd+βdd)])として現在に至っている。このモデルの指数部分を変形し単位がGyになるようにした値を生物学的効果線量BED=nd(1+d/(α/β))として治療効果の指標として頻用されてきた。 NSDやTDFでは分割回数と分割間隔の情報があったために、治療期間が一意的に決定された。一方、分割照射のLQモデルをよく見ると分割回数は規定されているが、分割間隔の情報が無い。従って、分割照射のLQモデルでは治療期間が任意の分割照射に対してBEDが一定になる。近年の大線量を短期間に照射するような定位照射の技術が実現すると、その治療の生物効果を表す定量的指標としてLQモデルを用いることは乱暴である。例えば大線量を連日照射する場合と、週1回のペースで照射する場合のBEDが計算では同じになる。臨床的には異なるであろうことが十分予想される。従って、従来のLQモデルを用いる場合にはどこまで用いられるかを検証する必要がある。 この度提唱したGLQモデルはこの問題を解決している。照射開始までの待機期間の導入を可能にした。細胞死として分裂死と間期死を仮定した。これらの比率は実際に推定するのは難しい。正常組織である皮膚の皮膚紅斑のシミュレーションでは、皮膚細胞は間期死をしないと仮定してモデル化できた。 また、このモデルでは腫瘍の増殖パラメータが必要であり、いくつかの報告から腫瘍増殖率を推定して当てはめた。これによって、複雑な腫瘍の時間線量分割関係をシミュレーションすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
近年の放射線治療ではIMRTの技術により線量分布を自由に作ることができるようになった。ボクセルの線量分布と生物効果による生物効果分布の作成を、GLQモデルを用いて試みる。 関連研究として、GLQモデルでの解析が意味のある体幹部定位照射の照射技術である呼吸同期照射と呼吸追尾照射のシミュレーションモデルを実際の呼吸波を用いてMathematicaを用いてバーチャルシミュレーションする。 これまでの研究成果は3Dでの研究のため、紙ベースの論文でのインパクトが少ないと判断してHPを更新して行ってきた。最終年度の当たり、HPの更新を行うが、論文化も試みる予定としている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
残高は消耗品程度の額であり、2013年度は追加の消耗品の必要はなかったため、次年度の消耗品購入の際にまとめて使用することにした。 残金は、プリンターインクとして使用予定。
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Research Products
(3 results)