2012 Fiscal Year Research-status Report
新規情報学的手法によるインフルエンザを含む人獣共通感染症ウイルスゲノム配列の解析
Project/Area Number |
23500371
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Research Institution | Nagahama Institute of Bio-Science and Technology |
Principal Investigator |
池村 淑道 長浜バイオ大学, バイオサイエンス研究科, 教授 (50025475)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
阿部 貴志 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (30390628)
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Keywords | ゲノム情報処理 / 進化遺伝 |
Research Abstract |
ゲノム配列解析は情報爆発の時代を迎えた。我々の開発した一括学習型自己組織化マップ (BLSOM)は優れた解析能と画像表示能を備えており、大量情報からの知識発見へ強力な手段を提供している。 約12,000株のA及びB型のインフルエンザウイルスゲノムを対象に連続塩基組成に基づいたBLSOM解析を行った。前年度までの研究で、2009年から流行した新型A型株のゲノム配列に方向性のある変化を見出し、変化方向の予測に役立つ事を発表したが、その論文発表後に配列解読された新型株でもこの予測が成立することを確認した。トリで流行している、人類に脅威を与える可能性のある危険株の、BLSOMによる探索法の開発を含めて、新規な論文とし投稿中である。 人獣共通感染症を引き起こすウイルス類の感染防止を目標に、ウイルスRNAと宿主因子の相互作用に注目した。ウイルスRNAが宿主タンパク質と相互作用する場合、その結合用塩基配列は宿主RNAが使用している配列と同一、あるいは類似性が高いと考えられる。加えて、高い進化速度を持つRNAウイルスゲノム上でも保存性が高いと予想される。ウイルスRNAと宿主RNAが共通して持つ配列モチーフを探索するために、それらRNAを合せた大量データを対象にBLSOM解析を行った。結果として、宿主由来RNAと共通した配列モチーフを保持しているウイルスゲノム部位を特定する効率的な方法が開発できた。なお、この方法開発の過程では、RNAとタンパク質の結合部位の研究の進んでいるtRNAをモデルに開発を進めた。タンパク質側からのアプローチとして、ペプチド組成を対象にしたBLSOMの開発も進めている。 マダニは人獣共通感染症を引き起こすウイルスを含む微生物を体内に持ち、人類に脅威を与えている。マダニ体内試料からのウイルスを含む微生物ゲノムのBLSOMによる検索の結果を論文発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
各年度に申請をする地球シミュレータの使用許可が、平成24年度も得られたので、順調に計画が達成できた。プログラムの高速化にも成功したので、高次元データの解析も容易となった。
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Strategy for Future Research Activity |
新規制の高い強力な解析手法が確立できたので、ヒトで新規な流行を引き起こす可能性のある、危険なトリやブタで流行しているウイルス株の予測を発表することを通じて、この新技術の普及を図る。前回の論文発表で行った予測が、それ以降に配列解読が行われたウイルス株でも成立する事が確認されたので、予測の信頼性が示された。この点を実験家に提示して、この解析手法の普及を目指す。並行して、宿主タンパク質とウイルスRNAとの相互作用の機構を解明する目的で、宿主の多様なRNA類と共通性のある5連や6連塩基頻度を持つ、ウイルス側のゲノム部位をBLSOMにより探索し、ウイルス感染の防止方法についての提案を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
既に機器備品の購入を終えたので、平成25年度はプログラム開発や研究補助員への謝金、英文校閲を含む論文発表用費用、旅費を含む学会発表のための費用、ならびに計算機関係の消耗品への仕様を計画している。
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Research Products
(12 results)