2011 Fiscal Year Research-status Report
発達障害原因遺伝子CDKL5のプロテオミクスとKOマウス解析による包括的機能解明
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23500381
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田中 輝幸 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (10246647)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
天野 睦紀 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90304170)
水口 雅 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20209753)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 発達障害 / 行動解析 / 海馬 / リン酸化 / 相互作用 / 情動障害 / 記憶障害 / ノックアウトマウス |
Research Abstract |
本年度は、我々が作製したCyclin-dependent kinase-like 5 (CDKL5)ノックアウト(KO)マウスの、海馬CA1錐体細胞樹状突起スパインの密度・形態解析、海馬スライス電気生理学的解析、網羅的行動解析、等の詳細な表現型解析を行った。その結果、海馬LTP(長期増強現象)における興奮性の異常、学習障害、長期記憶障害、不安様行動の亢進、うつ様行動の亢進、社会性の変化、などの特徴的な表現型を同定した。 yeast two-hybridスクリーニングを用いたCDKL5相互作用分子の網羅的探索により得られた複数の相互作用因子候補について、共免疫沈降、GST pull-downアッセイ、in vitro kinase アッセイにより相互作用及びリン酸化の検証を行った。その結果in vivoにおける細胞モーター蛋白との相互作用、in vitroにおける細胞骨格蛋白及びシナプス関連蛋白との相互作用及びリン酸化を同定した。 更にCDKL5のリン酸化基質の網羅的同定を目的としたインタラクトーム解析のため、マウスCDKL5のN末端側キナーゼドメイン(野生型、及び活性欠失変異体)のGST標識体をbaculovirus発現システムを用い作製し、small scaleにおいて目的の組み換え体の発現を確認した。 本年度の研究成果によって、Cdkl5 KOマウスが、ヒトのCDKL5遺伝子変異による病態と共通した、長期記憶障害、情動異常などを示す事が明らかとなった。本KOマウス表現型の更に詳細な解析が、ヒトの病態解明にとって極めて重要であることを示す。また相互作用蛋白スクリーニングの結果、CDKL5は複数のシナプス関連蛋白と相互作用することが示された。CDKL5のシナプス機能調節における機能不全が、CDKL5遺伝子変異に伴う神経発達障害の分子基盤であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、「CDKL5 loss-of-function (LOF) 分子機構の多次元的な解明」という目的に向けて、Cdkl5 KOマウスの、海馬の神経細胞樹状突起スパインの微細解析、海馬の電気生理学的解析、網羅的行動解析、等の表現型解析を行い、樹状突起スパインの密度・形態の異常、海馬LTPにおける興奮性の異常、学習障害、長期記憶障害、不安様行動の亢進、うつ様行動の亢進、社会性の変化、などの特徴的な異常を初めて明らかに出来た。これらは新規知見であり、ヒトの病態解明のための重要なデータである。また、「CDKL5作用ネットワークの解明」という目的に向けて、yeast two-hybridスクリーニングにより得られた相互作用蛋白候補の中から、実際にCDKL5と相互作用し、リン酸化基質となる新規蛋白を同定出来た。CDKL5リン酸化基質プロテオーム解析のための、baculovirus発現系を用いた組換え蛋白も作製した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で明らかにした、Cdkl5 KOマウスの不安亢進等の情動障害と記憶障害の、基礎メカニズムの探索を進める。具体的には、情動障害のメカニズム探索のため、KOマウスに対するモノアミン取り込み阻害剤、GABAアゴニストなどの投与に対する反応性の、行動解析的評価を行う。モノアミン系の脳内濃度、レセプター発現、さらにレセプター活性と、上流から下流へ障害部位の探索を進める。海馬スライスを用いて、NMDAおよびAMPA受容体の入出力関係、NMDA-AMPA ratioの検討、excitatory-inhibitory balanceの検討など更に詳細な電気生理学的解析を行う。 CDKL5リン酸化基質のプロテオーム解析のため、組換え蛋白の大量発現・精製を行い、名古屋大学大学院医学系研究科、天野睦紀博士との共同研究を進める。 Yeast two-hybridスクリーニングで得られた相互作用蛋白、リン酸化基質の、in vivoにおける検証と、各蛋白相互作用の機能解析を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度も、Cdkl5 KOマウスの分子細胞生物学的解析、電気生理学的解析、行動解析、等の表現型解析を引き続き行う。そのためマウスの飼育・維持費、上記解析のための試薬類、チューブ、スライドグラス等の実験器具を、消耗品費として使用する。 CDKL5リン酸化基質プロテオーム解析のため、baculovirus発現系を用いたGST標識体の大量発現・精製、実験動物脳サンプルを材料としたクロマトグラフィー+質量分析、及び生化学的実験のための試薬類、実験器具を、消耗品費として使用する。 蛋白相互作用解析、kinaseアッセイのため、細胞培養用の試薬、抗体、酵素、遺伝子導入試薬、チューブ、培養皿・フラスコ、スライドグラス等の実験器具、等を、消耗品費に計上する。 より良い研究成果を挙げるための研究の打ち合わせや、成果を発表し最新の研究動向の情報を仕入れるための学会への参加のために旅費を使用する。 以上の経費を計上したものを次年度の研究経費として使用する予定である。
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