2011 Fiscal Year Research-status Report
タウリンによるKCC2活性制御の分子基盤とその意義の解明
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23500387
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
井上 浩一 浜松医科大学, 医学部, 准教授 (80345818)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | タウリン / GABA / KCC2 / 大脳皮質構築 / リン酸化 |
Research Abstract |
我々はこれまでの研究から、神経特異的イオン輸送体であるKCC2の活性がタウリンにより抑制されることを見出していた。最近、KCC2のThr906とThr1007が発達依存的にリン酸化状態が減弱し、さらにそれらのリン酸化は非神経細胞でKCC2の活性を抑制することが報告されたが、この現象は我々の見出したタウリンが関与するリン酸化依存的なKCC2の活性制御に関与しているのではないかと仮説を立てた。そこで、上記2か所のThrをAlaに置換したKCC2変異体であるKCC2T906A/T1007Aを作製し、神経細胞に導入後電気生理学的にKCC2の活性の指標である細胞内Cl-濃度([Cl-]i)を調べたところ、その低下がみられ、神経細胞でも野生型KCC2(KCC2wt)より高い活性を示すことがわかった。さらに、KCC2wtはタウリンによりその活性が抑制されるが、KCC2T906A/T1007は抑制されなかった。また、これらのThrをリン酸化することが示唆されているWNK-SPAK/OSR1のリン酸化をウェスタンブロッティング法を用いて調べたところ、タウリンの投与によりリン酸化が増加し、活性が増加していた。KCC2wtをラット胎仔大脳皮質に導入しても、細胞移動には影響を与えないことが報告されている神経細胞の放射状移動における[Cl-]iの影響を調べるために、KCC2T906A/T1007Aを子宮内電気穿孔法によりラット胎仔に導入したところ、その移動が阻害された。これらのことから、大脳皮質の放射状神経細胞移動には[Cl-]iが関与しており、おそらくGABAによる興奮性が重要なのではないかと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
KCC2の変異体であるKCC2T906A/T1007Aがタウリンによる活性抑制を受けなかったことから、WNK-SPAK/OSR1シグナル経路の反応を調査し、当初の仮説通りタウリンによるリン酸化状態の増加が認められた。これらから、23年度中に予定していた、KCC2のタウリンが関与するリン酸化部位の同定、およびリン酸化に関するシグナルカスケードの同定に成功しているので、達成度としてはおおむね順調といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
タウリンがKCC2の活性を抑制する生理学的意義を見出す。カハールレチウス細胞などいくつかの細胞である程度成熟した後もGABAが興奮性に作用することが知られているが、そのうちのいくつかはKCC2の発現が認められるという報告がある。これらのKCC2存在下でのGABAの興奮にはKCC2の活性抑制が関与していると考えられるので、KCC2の発現分布を免疫組織化学的手法を、GABAの作用あるいは[Cl-]iを電気生理学的手法を用いて検討していく。KCC2存在下でのGABAの興奮が認められた場合、リン酸化酵素の阻害剤投与、あるいはSPAKのドミナントネガティブ変異体を用いて[Cl-]iが変化するか調査する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年同様に、主に消耗品の購入費として使用していく。
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Research Products
(6 results)