2014 Fiscal Year Research-status Report
視床ー視床網様核ー大脳皮質のループ回路が構成する感覚情報処理機構の解明
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23500397
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
木村 晃久 和歌山県立医科大学, 医学部, 准教授 (20225022)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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Keywords | 視床網様核 / 聴覚 / 視覚 / 体性感覚 / 感覚統合 / 視床 / 大脳皮質 / 注意 |
Outline of Annual Research Achievements |
視床網様核は、視床核と大脳皮質領域が出力した情報を受け、視床核に抑制投射し、視床核の情報処理と視床核が大脳皮質領域に送る情報の伝達を制御する。本研究では、異種感覚情報が視床網様核細胞に収束、干渉して、異種感覚が視床網様核を介して相互に情報の処理と伝達を修飾し、注意、知覚、意識を制御することを仮定する。視床網様核における視覚と聴覚の相互干渉(European Journal of Neuroscience, 39, 1405-1418, 2014)に引き続き、当該年度では、動物(麻酔したラット)実験において、聴覚と体性感覚及び視覚と体性感覚が視床網様核で相互に干渉することを明らかにした。聴覚と体性感覚の相互干渉に関する研究結果は学会で報告し、視覚と体性感覚の相互干渉に関する研究結果とともに、現在論文にまとめている。本研究の仮定が、概ね検証されたと考える。加えて、視床網様核細胞の活動特性に関する研究を継続し、当該年度では、1次あるいは高次視床核に投射する視床網様核聴覚細胞群が特異なバースト活動を示す結果を論文にまとめ報告し(European Journal of Neuroscience in press)、既に報告した視覚細胞群の結果を踏まえ、バースト活動の特性に基づく2つの特異な感覚情報制御機構が視床網様核に存在することを示唆した。更に、視覚、聴覚に加え、体性感覚、運動、辺縁システムの制御に関わる視床網様核細胞の自発バースト活動の特性が神経前後軸に沿って変化することを学会で報告した。バースト活動は細胞間の情報伝達効率に影響し、異種感覚の相互干渉ではバースト活動の修飾を認める。研究は、視床網様核の機能解剖の基本要素(視床網様における異種感覚の相互干渉と解剖学的に構成されたバースト活動の特性)を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度以降の研究実施計画に含まれる研究項目2)<視床網様核細胞が反応する感覚種を特定し、その感覚種の刺激に対する1次、2次反応が、他の感覚種の時間差刺激にどのように影響されるか調べる>の実験とデータ解析は全て終了した。聴覚-視覚間の影響に関する研究結果を論文に発表したが、聴覚-体性感覚及び視覚-体性感覚間の影響に関する論文を現在作成中である。また、当初の研究実施計画に含まれていないが、全体の研究目的達成に有用な研究(1次と高次視床核へ投射する視床網様核細胞群が示すバースト活動の特異性)を継続し、視覚細胞群に関する論文発表に引き続き、聴覚細胞群に関する研究結果を論文にまとめ報告した。更に、視床網様核全域からバースト活動の特性を調べ解剖学的構造と特性の関係に関する結果を論文にまとめるところである。平成23年度研究実施計画に含まれる研究項目1)<内側膝状体細胞から、音圧と周波数に関連した1次、2次反応の特性を調べ、更に、2音の時間差刺激による1次、2次反応の変化と細胞の解剖学的特性を調べる>の実験1では、研究対象を内側膝状体細胞から興味深い予備結果が得られた視床網様核細胞に変更し実験を遂行中である。平成23年度研究実施計画に含まれる研究項目1)<体性感覚(痛覚)あるいは視覚の時間差刺激による1次、2次聴覚反応の変化を内側膝状体細胞から記録し、反応の変化と解剖学的特性の関係を調べる>の実験2と3は、結果の解析が概ね終了し論文にまとめるところである。平成24年度以降の研究実施計画の研究項目3)<大脳皮質1次聴覚野及び島皮質聴覚野において、2音の時間差刺激、あるいは異種感覚刺激による聴覚1次、2次反応の変化を調べる>では、実験の準備は完成したが、実験の施行に至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度研究実施計画に含まれる研究項目1)の実験1と平成24年度以降の研究実施計画に含まれる研究項目3)の実験は、計測システムが完成しているので、研究項目1)の実験1と同じ内容で優先して実施している視床網様核細胞での実験に引き続き、実験を施行する。平成23年度研究実施計画に含まれる研究項目1)の実験2と3の結果、平成24年度以降の研究実施計画に含まれる研究項目2)の聴覚-体性感覚及び視覚-体性感覚間の影響に関する実験の結果、視床網様核細胞の自発バースト活動の特性に関する研究結果を論文にまとめる。これまでの研究結果を支持し発展させる細胞近傍記録-染色法を覚醒動物に適用する新たな実験が今後展開できるように、実験システムを構築する。
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Causes of Carryover |
平成23年度研究実施計画に含まれる研究項目1)の実験1と平成24年度以降の研究実施計画に含まれる研究項目3)の実験の施行が遅れ、実験に使用予定の消耗品費用(薬品及び動物の購入)残り、平成23年度研究実施計画に含まれる研究項目1)の実験2と3の結果、平成24年度以降の研究実施計画に含まれる研究項目2)の聴覚-体性感覚及び視覚-体性感覚間の影響に関する実験の結果と当該年度に施行した視床網様核細胞の自発バースト活動の特性に関する研究結果の報告(論文と学会発表)に充てる予定の費用が残った。また、実験全体の遅れから、覚醒動物から細胞活動を記録する新たな実験システムを構成するための備品の購入が当該年度で行うことができなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験動物、薬品等の消耗品は、繰り延べになった当初の研究実施計画に沿って使用する。視床網様核細胞及び内側膝状体細胞の感覚反応特性あるいは自発活動特性に関する研究結果(4-5項目)を論文と学会で発表する費用をして使用する。細胞近傍記録-染色法を覚醒動物に適用する新たな実験システムを構成するために必要な研究備品(データ解析ソフト等を含む)を購入する。
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Research Products
(6 results)