2015 Fiscal Year Annual Research Report
視床ー視床網様核ー大脳皮質のループ回路が構成する感覚情報処理機構の解明
Project/Area Number |
23500397
|
Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
木村 晃久 和歌山県立医科大学, 医学部, 准教授 (20225022)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2016-03-31
|
Keywords | 視床網様核 / 聴覚 / 視覚 / 体性感覚 / 感覚統合 / 視床核 / 大脳皮質 / 注意 |
Outline of Annual Research Achievements |
視床網様核は、視床核と大脳皮質領域が出力した情報を受け、視床核に抑制投射し、視床核の情報処理と視床核が大脳皮質領域に送る情報の伝達を制御する。動物(麻酔したラット)実験において、聴覚と体性感覚(当該年度で論文を作成、投稿中である)、視覚と体性感覚(当該年度の学会で報告し、現在論文を作成中である)入力が視床網様核で相互に干渉することを明らかにし、異種感覚が視床網様核を介して相互に情報の処理と伝達を修飾する可能性を示した。異種感覚入力の干渉は、1次あるいは高次視床核に投射する2種類の細胞で認めた。このことは、複数種の感覚入力を受ける高次視床核に加え、一種類の感覚情報の処理にその機能が特化すると考えられていた1次視床核が視床網様核の影響を受け異種感覚の統合に関与する可能性を示唆する。この可能性を検証するため、当該年度で、単一の視床核細胞の感覚反応を記録し細胞の位置を正確に同定する細胞近傍記録染色法を用いた動物(麻酔したラット)実験を施行し、聴覚の1次視床核(内側膝状体腹側亜核)の聴覚反応が体性感覚刺激あるいは視覚刺激で変化することを明らかにした(現在実験結果をまとめている)。加えて、視覚の1次視床核(外側膝状体背側核)の視覚反応が聴覚刺激で変化することを示唆する実験結果を解析中である。近年、特定種の感覚情報処理にその機能が特化すると考えられていた大脳皮質1次感覚野で異種感覚の干渉が明らかされ、異種感覚の情報統合に関する概念の見直しが求められている。大脳皮質1次感覚野の主たる入力源である1次視床核と視床網様核における異種感覚の干渉を示したこれらの研究結果は、大脳皮質1次感覚野で認める異種感覚の干渉が視床―視床網様核―大脳皮質が構成するループ回路に由来することを示唆し、特定種の感覚処理の結果が集約して異種感覚の統合に至る階層的神経機構を想定する従来の概念を変革する結果であると考える。
|
Research Products
(5 results)