2011 Fiscal Year Research-status Report
Cbln-デルタ1グルタミン酸受容体系のシナプス可塑性における機能解明と精神疾患
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23500399
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
幸田 和久 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (40334388)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | デルタグルタミン酸受容体 / Cbln / 海馬 / 精神疾患 |
Research Abstract |
デルタ1欠損マウスには統合失調症モデルで見られるpaired-pulse inhibition (PPI)の低下に加え、抑うつモデルの所見である強制水泳テストでの無動時間の延長もあることが分かった。これらの所見は、デルタ1受容体の欠損が単一の精神疾患の原因というより、むしろ統合失調症や抑うつの症状形成に重要な役割を果たすことを示唆する。そこで、PPIに対しては抗精神病薬、強制水泳に対しては抗うつ薬の効果を評価して、動物モデルとしての妥当性を検討する。電気生理学的研究からは、デルタ1受容体欠損マウスにおいて、嗅内皮質Cbln1発現ニューロンが投射する海馬CA1透明分子層における長期増強の閾値の低下が見られた。この経路は近年、潜時を伴う作業記憶との関連が指摘されているため、同作業記憶の行動実験を行い、デルタ1受容体の生理的意義を明らかにする。また統合失調症患者のゲノム解析によって見出した1受容体の細胞外N端部位の1アミノ酸置換変異が統合失調症に特異的変異であるかを、検体数を増やして再検討する。また同変異を導入したデルタ1受容体変異体を作成し、Cbln分子との結合やシナプス形成に変化が見られるかをin vitroの実験系において確認を行う。もし変化が見られた場合には、デルタ1受容体欠損マウスを用いて同変異受容体のノックインマウスあるいはトランスジェニックマウスを作成し、上記の電気生理学的及び行動学的解析を行い、疾患モデルとしての妥当性と1受容体の病態形成における意義を解明する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
デルタ1受容体およびCbln1-4ノックアウトマウスの表現型が当初予想したよりも微妙なものであったため、電気生理学的、行動学的解析に時間を要している。また精神疾患患者のゲノム解析に関しては、倫理委員会の承認が遅れ、研究開始が遅れた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに得られた結果とデルタ1受容体あるいはCbln分子の欠損が、単なる相関関係でなく因果関係を持つことを明らかにするために、ウイルスベクターや外的にCbln分子を補給することによって、異常表現型の回復実験を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
消耗品(マウス飼育費、試薬など)、学会参加のための旅費、および論文校閲等に使用を予定している。上記の計画の遅れのため、平成23年度に予定していた実験が実施できなかったため、予算を平成24年度に繰り越した。
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