2012 Fiscal Year Research-status Report
Cbln-デルタ1グルタミン酸受容体系のシナプス可塑性における機能解明と精神疾患
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23500399
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
幸田 和久 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (40334388)
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Keywords | デルタグルタミン酸受容体 / Cbln / AMPA受容体 / トラフィッキング / 小脳 / 海馬 / 精神疾患 |
Research Abstract |
デルタ型グルタミン酸受容体のシグナル伝達に関して大きな進捗があった。デルタ型グルタミン酸受容体はそのリガンドが不明で、チャネル活性も見られないため、どのように機能しているかが不明であった。デルタ2受容体(GluD2)の細胞内C末端に結合するチロシン脱リン酸化酵素PTPMEGに注目して研究を進めた結果、GluD2は小脳プルキンエ細胞における長期抑圧誘導の際、PTPMEGを介してAMPA受容体サブユニット2(GluA2)のC末端に存在するチロシン876の脱リン酸化を引き起こすことが明らかになった。そしてこの脱リン酸化によって、従来から長期抑圧に必須であることが知られていたGluA2のセリン880のリン酸化を可能にすることが分かった。この所見は、デルタ族の細胞内シグナルを初めて明らかにしたことに加え、今まで知られていなかったGluA2のトラフィッキング調節のメカニズムを明らかにしたことになる。そこでこれらの知見をまとめて、PNASに投稿し、受理された。 また、デルタ1受容体(GluD1)のノックアウトマウスの行動解析から、作業記憶の一種である遅延恐怖条件付けに障害があることが明らかになった。遅延恐怖条件付けは嗅内皮質から海馬CA1への投射に依存する学習であることが知られており、当該回路にはGluD1とともに、Cbln1及び4が発現していることから、Cbln-GluD1系の機能を明らかにするための重要な所見である。さらに、この回路の電気生理学的解析から、シナプス可塑性に障害があることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
デルタ族のシグナル伝達のメカニズムを初めて明らかにし、PNASに報告することができた。この知見を手がかりとして、GluD1の機能解明へ進めてゆく。GluD1ノックアウトマウスの解析は順調に進んでおり、Cbln-GluD1の発現する回路特異的な学習の障害を発見し、さらに同部位の電気生理学的異常も見つかったことから、同システムの機能解明が進展した。
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Strategy for Future Research Activity |
GluD2で発見したシグナル伝達がGluD1においても成立しているかを確認し、特にチロシン脱リン酸化がGluD1の関与するシナプス可塑性に関与するかを明らかにする。またGluD1ノックアウトマウスで確認された電気生理学的、行動学的異常のGluD1との因果関係を示すため、GluD1をウイルスベクターや子宮内電気穿孔法を用いてGluD1ノックアウトマウスに導入して、実験を行う。Cbln系との関連は同分子の遺伝子改変動物を用いて同様に研究を進めることで明らかにしてゆく。またGluD2の小脳以外における機能を明らかにするため、GluD2の前脳特異的欠損マウスを用いて、行動解析を進める。これらの分子の精神疾患との関連を明らかにするためのゲノム解析も、さらに進めてゆく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
未使用額の発生は効率的な物品調達を行った結果であり、翌年度の消耗品(マウス飼育費、試薬など)の購入に充てる予定である。その他学会参加のための旅費、論文校閲等に使用を予定している。また、電気性理学的解析のため、新たに潅流用ポンプ、マニピュレータを購入予定である。
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Research Products
(3 results)