2011 Fiscal Year Research-status Report
神経損傷後の中枢神経回路の改編を制御する神経活動依存的機構の解析
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23500400
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
宮田 麻理子 東京女子医科大学, 医学部, 教授 (70281631)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 視床 / 内側毛帯繊維 / 眼窩下神経 / 神経切断 / リモデリング |
Research Abstract |
四肢切断、脊髄損傷などの求心性経路が遮断されると、その投射先である視床や体性感覚野などの上位中枢において受容野の大きさが変化し、神経軸索走行が変化することから、上位中枢においても大規模な神経回路の書き換え(再編成)が生じると考えられている。こうした神経回路の再編成は、脳障害後の代償機能や、幻肢痛などの異常感覚にも深く関与すると考えられ、その機構の解明は、脳機能回復に向けた新たな治療・リハビリ法の開発に極めて重要である。これら求心性入力遮断後の急性期では上位中枢神経細胞自身の神経活動が変化することが示唆されている。例えば、末梢感覚神経損傷後に視床や大脳皮質で、GABA濃度が数分以内に減弱する事や、感覚神経損傷後の視床において、胎児型ナトリウムチャネル(Nav1.3)が発現し、視床の神経活動が亢進することが報告されている。このような急性期での活動性の変化は、受容野のUnmasking現象に関与すると考えられている。しかしながら、神経損傷による中枢神経系の活動性の変化が、その後に引き起こされるであろう神経回路自身の改編にどのような影響を与えているかについては明らかになっていない。 この問題に対し、神経切断後の中枢神経系での抑制性・興奮性入力のバランス変化を明らかにし、最終的には神経活動性を操作することで、神経損傷後の中枢神経回路の改編における神経活動依存的な機構を調べる。具体的には、電気生理学的に求心線維のシナプス解析と入力様式の解析が可能な内側毛帯線維―視床VPm核投射細胞シナプスを対象に、申請者がこれまでに明らかにした末梢感覚神経損傷による多重支配化現象に着目して研究を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに申請者は、成獣マウスの眼窩下神経を切断すると、術後5~6日目から、記録したVPm細胞の約70%の細胞で、新規内側毛帯線維がシナプスを形成し、支配本数が2~4本に有意に増えることを電気生理学的に発見し(多重支配化現象)、J.Neurosci.2012に報告した。 今年度は、多重支配線維が切断後5~6日目で出現することを受けて、多重化の誘導過程が切断後5~6日目の間で生じると推論し、この間のVPm細胞への興奮性と抑制性入力のシナプス解析を行った。その結果、抑制性入力(IPSC)は網様体核の最小刺激により得られるeIPSPも、自発のIPSC (sIPSC)も切断後1日目で減弱し7日目まで減弱は続く傾向にあった一方、興奮性入力は内側毛帯線維一本あたりのEPSCも自発のEPSCも多重支配が生じる手術後7日目前後ではじめて減弱していた。即ち、抑制性入力の減弱が興奮性入力の減弱より先行する傾向にあった。即ち、切断直後は抑制性の減弱により、視床細胞の興奮性が上昇すると考えられる。これらの興奮性の亢進が、多重支配の誘導にどのように関わるかを調べてゆきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
視床スライスにおける神経切断による視床細胞へのシナプスレベルでの興奮性と抑制性の入力バランスの変化を捉えることができたので、本年度はこの変化がin vivoにおいて神経活動性にどのように反映するのかを見てゆく必要がある。さらに、本研究の主目的であるウィルスベクターによるKir2.1,NachBacの視床細胞への導入も試みてゆく。そのための条件設定を本年度は行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
申請者はすでに眼窩下神経を切断すると、5~6日目から新規の内側毛帯線維がVPm細胞にシナプスを形成する知見を得ている。従って、術後6日間のシナプス後部の神経活動性の変化に絞って解析する。1.内側毛帯シナプスの成熟が完了した(P21以降)成獣マウスにおいて、髭の感覚を支配している三叉神経第二枝(眼窩下神経)を麻酔下で切断する。2.術後経時的(例えば、1h、12h、24h、2days, 6days)に麻酔下で脳定位的にVPm核から細胞外記録を行い自発活動の変化を解析する。眼窩下神経切断群では髭領域を触刺激しても反応が出ないが、それより腹側に記録電極を進めるとVPL核に入り、体(下肢)に受容野をもつ細胞が出現するので、その相対的位置でVPm領域を同定する。3.同時に下顎、前吻側など三叉神経第三枝領域を触刺激して神経活動を観察することで、受容野の広がりをコントロール群と比較する。これにより、眼窩下神経切断後のVPm核の神経活動の経時的変化を明らかにする。
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Research Products
(7 results)