2012 Fiscal Year Research-status Report
神経損傷後の中枢神経回路の改編を制御する神経活動依存的機構の解析
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23500400
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
宮田 麻理子 東京女子医科大学, 医学部, 教授 (70281631)
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Keywords | 視床 / 内側毛帯線維 / 神経損傷 / 神経可塑性 |
Research Abstract |
感覚性求心経路の遮断・切断によって、その投射先である視床・体性感覚野などの上位中枢神経系では神経回路の配線と機能が可塑的に変化する。この変化の誘導には、神経活動依存的な要因が示唆されているが、改編する神経回路のシナプスレベルでの厳密な規則性は十分に解明されていない。神経活動は抑制性と興奮性のバランスで規定されている。本研究は、申請者が発見した、眼窩下神経の切断によって誘導される内側毛帯線維-視床VPm核投射細胞シナプスの多重支配化現象をモデルに、シナプス後細胞への興奮・抑制のバランスと神経回路改編の関係を調べてきた。視床VPM細胞へのphasicな抑制性入力(eIPSC) は視床網様体核を最小刺激することによって誘発される。このeIPSCおよびmIPSCsは、眼窩下神経切断後1日目には大きく減弱し、その後も内側毛帯線維のリモデリングが生じる7日目まで減弱していた。即ちphasic inhibitionは神経損傷により術後1日目よりVPm細胞で低下した。興味深い事に、eIPSCと反対にGABAによるtonic inihibitionは手術後1日目から増強しており、多重支配を示した手術後7日目の細胞で特異的に増強していた。内側毛帯線維の多重支配は術後5日目から出現することから、それよりも早期に抑制性入力が劇的に変化していることになる。電荷量を計算すると、eIPSCの減弱よりもtonic inihibitionの増強による電荷量が大きいため、切断後の視床の細胞は過分極方向にシフトしていることが想定された。さらに、損傷後一週間目ではtonic inhibition の増強は内側毛帯線維が多重支配を起こしている細胞で特異的にみられた。このことから、tonic inhibitionと多重支配の間には何らかの関係性があることが推測された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
神経損傷後、VPm細胞へのphasic inhibition は損傷後1日目から低下していた。予想に反して、同じ時間経過でtonic inhibition の増強現象を見いだした。また興味深いことに、この増強が神経損傷後の多重支配を示す細胞に特異的に観られることも観察されており、神経損傷によって先ずは抑制系が変化し、それにより内側毛帯線維が改編されることも示唆された。最終年度はウイルスベクターによる遺伝子導入法によって、抑制性(tonic とphasic inhibition)に外乱をかけることにより、内側毛帯線維の改編にどのような影響を与えるかを明らかにする予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
tonic inhibition の増強が、内側毛帯線維の多重支配を起こしているVPm細胞に特異的に認められることから、当初予定していた、Kir2.1型カリウムチャネルや NaChBac型ナトリウムチャネルを視床VPm細胞に発現させるのではなく、ウィルスベクターによる遺伝子導入技術を用いて、tonic inhibition を担うα4サブユニットを損傷後の視床で特異的にノックアウトすることにより、内側毛帯線維の再編に影響を与えるのかを明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ウイルス作製に必要な消耗備品、および試薬の購入に60万円を予定している。その他、動物代に10万円、国内外成果発表に20万円、ウイルスの輸送費、ウイルスの共同作製先との打ち合わせのための費用40万円、論文投稿料に10万円の予算をたてている。
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Research Products
(17 results)