2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23500403
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
齋藤 直人 同志社大学, 生命医科学部, 准教授 (90334226)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 神経科学 |
Research Abstract |
ミトコンドリアはホストである真核細胞に必要な分のATPを供給することが主要な役割であるといえる。このミトコンドリアのATP合成活性がシナプス部位においてどのように制御されているのかに関しては十分な知見がない。本研究課題として、cAMPに着目した。ミトコンドリア内のcAMP濃度が上昇するとこれが電子伝達系を活性化し、ATP合成活性を上昇させるという経路が提唱されている。このような細胞シグナリングはシナプス部位においても重要であると考えられる。シナプス部位にはカルシウム依存性アデニル酸シクラーゼがあり、高頻度のシナプス伝達に応じて流入してきたカルシウムによってシクラーゼ活性が上昇しcAMP濃度が上昇する。このシナプス部位のcAMPはシナプス部位のミトコンドリアに働きかけ、ミトコンドリアのATP合成活性を上昇させる。この結果、高頻度のシナプス伝達で消費されたATPを補給する、または高頻度のシナプス伝達を維持するだけのATPを供給することができるようになる。それではミトコンドリアcAMPはどのような制御を受けているのだろうか。細胞質基質のcAMP濃度を受動的に受けてミトコンドリア内のcAMP濃度は変動しうると考えられる。一方、ミトコンドリア内には独自のアデニル酸シクラーゼやホスホジエステラーゼを持っているという報告もあり、ミトコンドリア独自の制御システムも共存していると考えられる。このように動的に変化するであろうシナプスミトコンドリアのcAMPをリアルタイムイメージングすることによって、ミトコンドリアの動的な活動とシナプス伝達の相関を明らかにすることができるだろう。そこで、cAMP濃度をリアルタイムイメージングできる新規蛍光プローブを作成した。このcAMP蛍光プローブをミトコンドリアにターゲットさせることによって、シナプスミトコンドリア内のcAMPを特異的に測定することを目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
シナプスミトコンドリアの動的な活動に着目し、シナプス伝達と結びつけていくことが、本研究課題の最大の特徴である。この目的のために、初年度は新規cAMP蛍光プローブの作成を試み、細胞質基質のcAMP変動に応じておよそ1.5倍の蛍光変化を示すような蛍光プローブの作成に成功した。現在このcAMP蛍光プローブをミトコンドリアに特異的にターゲットさせることを考えている。次年度以降、ミトコンドリアにターゲットすることに成功した後に、神経細胞に発現させ、シナプスミトコンドリアをイメージングしながら、シナプス伝達を測定することを試みる。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に作成した蛍光プローブを用いて、ミトコンドリアにターゲットするコンストラクトを完成させる。また、蛍光プローブそのものの改良も同時に試みる。ミトコンドリアのリアルタイムイメージングに成功した後に、これを培養神経細胞に発現させ、シナプス部位のミトコンドリアのイメージングを試みる。電気生理と組み合わせることによって、シナプスミトコンドリアとシナプス伝達との相関に新たな知見を見いだす。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
引き続き、蛍光プローブのコンストラクト作成や改良を続けるため、DNA操作に関わる消耗品費に充てる。また、神経細胞をはじめとする細胞培養に関わる消耗品を購入する。さらにシナプス伝達や活動電位を測定するために電気生理関係の器具を充足させる。
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