2011 Fiscal Year Research-status Report
髄鞘形成および髄鞘再生におけるCYP51の機能的役割の解明
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23500404
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Research Institution | Tokushima Bunri University |
Principal Investigator |
宋 時栄 徳島文理大学, 大学共同利用機関等の部局等, 教授 (00399693)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中島 健太郎 徳島文理大学, 大学共同利用機関等の部局等, 助手 (20449911)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | CYP51 / SNP / cuprizone / 脱髄 / CO差還元 spectrum |
Research Abstract |
ICRマウスのLDM遺伝子exon 2のproline rich regionに、histidine(通常型)からtyrosine(変異型)へアミノ酸の置換を伴うSNPが報告されている。Tyrosine型LDM遺伝子を野生型とする C57BL/6マウスはcuprizoneによる脱髄の程度が強く、histidine型を野生型とするラットでは弱いため、SNPによるアミノ酸置換が LDMの酵素活性へ影響していることが示唆される。この点の解析を進め、以下の結果を得た。(1)ICRマウスに cuprizone 含有飼料を与え、脱髄の程度について解析した結果、通常型マウスでは強い脱髄の見られた個体が多いのに対し、変異型マウスでは、脱髄が軽微かほとんど見られない個体が多かった。ヘテロ型マウスの脱髄は野生型マウスよりも軽微であったが、変異型マウスよりも強かった。これらの結果から、SNPによる酵素活性への影響が示唆された。(2)各遺伝子型のマウスの脳および肝臓から抽出したmicrosome 画分を用いてCO差還元 spectrum によるCYP活性測定を行った結果、いずれの遺伝子型でも450nmに吸収極大を持つ活性型 CYPが回収されていることがわかったが、遺伝子型による活性の違いは見出せなかった。(3)回収したmicrosome画分にLDMの基質であるlanosterolを加え、代謝産物であるfollicular fluid meiosis- activating sterol (FF-MAS)をLC/APCI-Q-TOF/MSを用いて解析した結果、基質であるlanosterolはイオン化の過程で脱水し、その分子イオンピークはm/z: 409.5付近に検出されたが、FF-MAS由来のスペクトラムは認められなかった。現在、lanosterolとLDMの反応条件を検討し、再解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ICRマウスのLDM遺伝子で見出されたSNPがLDM酵素活性に与える影響は今のところ不明であるが、cuprizone 投与による実験的脱髄・髄鞘再生モデル系で、SNPによって脱髄程度に違いのあることが個体レベルで見出された。ヒトは野生型としてhistidine型のLDMを有しているが、様々な障害因子による脱髄の起こりやすさ、あるいは髄鞘再生能に関わるLDMのSNPが見出されれば、多発性硬化症等の脱髄性疾患の機序解明につながると考えられる。その意味で、今年度、LDM遺伝子のSNPが酵素活性に与える影響を明らかにするためのアッセイ系を立ち上げることができたことは一歩前進と言える。ただし、LDMの代謝産物を測定することで酵素活性を測定する系については感度の点で一工夫する必要がある。一方、今年度のもう一つの課題であった、神細胞とグリア細胞から成るaggregate cultureを用いてin vitro で髄鞘形成を起こさせ、それに影響する因子を解析する実験系もほぼ樹立できた。以上を総合して、これまでのところは比較的順調な進捗状況と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 来年度の最大の研究課題は、SNPによるLDM酵素活性の違いが証明できるかどうかであるが、これまでのところ、脳から抽出したmicrosome画分を用いた活性測定では違いは見出せていない。その原因として、肝臓に比べれば脳のLDMは量的に少なく、検出感度の点で問題のあることが考えられる。そこで次年度には野生型、変異型LDMをHEK293-T細胞など適当な動物細胞に強制発現させ、microsome画分に十分量のLDMが回収されるような実験系も併用して解析を進める。これまでの予備実験で、こうした発現系を樹立する目処が立ったので、来年度はLDMのSNPと酵素活性の関連について、明確な結論をだすことを目指す。2. 生後ラット脳での髄鞘の形成過程で、LDMの発現が変動することを見出したが、どのような制御機構でLDM発現が制御されているかは不明である。卵巣の LDM発現は性ホルモン依存性に制御されている事が知られている。脳内のLDM活性がこうしたホルモン、あるいはどのような生体内因子によって発現制御されるかを検討する。3. 現在用いている抗LDM抗体とは異なる epitope を認識する抗LDM抗体を新たに作成し、髄鞘の生後発達過程で発現が変化する15~26kDa蛋白の構造について検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度の最大の課題としたLDM酵素活性の測定については、学内の共同研究者の機器を使用させてもらうことができ、消耗品についてもかなりの援助を受けることができた。その結果、当初予定したよりは物品費に使用する研究費が少なくて済み、次年度への繰越金ができた。来年度はaggregate cultureや、LDMを強制発現させた細胞の維持など、培養系を用いた実験系への支出が増大すると予想される。こうした実験系は、組織学的解析や生化学的解析に比べると多くの支出を要するので、繰越金はそうした支出に充当する予定である。
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Research Products
(1 results)