2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23500408
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
上田 健治 公益財団法人東京都医学総合研究所, 認知症・高次脳機能研究分野, 研究員 (90261180)
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Keywords | αシヌクレイン / ミトコンドリア |
Research Abstract |
αシヌクレインはパーキンソン病、レビー小体型認知症、多系統萎縮症等の神経変性疾患の鍵分子の一つであり、これまで多くの病理的側面の研究が成されているが、αシヌクレインの生理機能は依然不明である。αシヌクレインが関与する神経変性疾患の分子病理の真の理解にはαシヌクレインの生理機能を知ることが重要である。生理的状態を熟知してこそ病理的状態を良く知り得る。 最近、我々はαシヌクレインが神経細胞のミトコンドリアに局在する事を見出した。ミトコンドリア異常は神経変性疾患の分子病理でも重視されている。従って、本研究ではミトコンドリアにおけるαシヌクレインの病態生理機能を解明する事を目的とする。ミトコンドリアにおけるαシヌクレインの生理・病理機能を多面的に検討する目的で、先ずラット脳から調製したミトコンドリアを用いて、αシヌクレインと作用するタンパク質の同定を試みた。ラット脳からミトコンドリアを調製し、抗αシヌクレイン抗体EQV-1(NAC領域)で共免疫沈殿(Co-IP)を行ったところ、mitochondrial permeability transition pore (mPTP)を構成するタンパク質、adenylate translocator(ANT)が検出された。さらに抗αシヌクレイン C末端特異抗体 PQE-3も利用したところANTと共沈殿する事が再確認された。次に、ドーパミン系神経細胞株MN9Dを用いて、αシヌクレインを導入発現させたところ、ミトコンドリアの形態異常が電顕レベルで確認された。さらにミトコンドリアの膜電位(ΔΨm)をJC-1染色法で検討したところ、ΔΨmの脱分極が確認された。そして、ANTの阻害剤であるbongkrekik acid (BKA)によってΔΨmの脱分極が部分的に回復した事から、αシヌクレインのANTとの結合がΔΨmの脱分極に繋がる事が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々は、αシヌクレインが神経細胞のミトコンドリア内膜に局在する事を見出し、αシヌクレインの濃度依存的に複合体Iの活性が低下する事を見出した(1)。しかもその濃度は1 pMという低濃度で効果がある事が判明した。従って、αシヌクレインはミトコンドリア機能の枢要なタンパク質、ないしは複合体に作用している事が推察された。これを踏まえて、ラット脳から分離・調整したミトコンドリアを用いてαシヌクレインが作用するタンパク質を検討したところ、adenylate translocator(ANT)が検出された。ANTはmitochondrial permeability transition pore (mPTP)の構成タンパク質である。mPTPはミトコンドリアの機能に重要な構造体であり、Ca2+によって構造変換を起こして開口ΔΨm脱分極し、ミトコンドリアのswellingを引き起こし外膜の崩壊を誘発し、内部のCa2+を放出し、近辺のミトコンドリアに悪影響を与えるストレスとなり、ひいてはアポトーシスに繋がり得る。mPTPの構成タンパク質の一つであるANTとαシヌクレインが作用する事、そしてαシヌクレインを培養神経細胞に過剰発現させると、ミトコンドリアの形態異常とΔΨmの脱分極が確認された点が非常に意義深い。 (1)Liu et al. (2009) α-Synuclein is differentially expressed in mitochondria from different rat brain regions and dose-dependently down-regulates complex I activity. Neurosci. Lett. 454: 187-192.
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Strategy for Future Research Activity |
培養神経細胞MN9Dを用いてαシヌクレインを導入発現させ、ミトコンドリアに与える影響が確認された事を踏まえ、そのメカニズムをさらに詳細に検討する。細胞としてはドーパミン系神経細胞株MN9Dだけでなく、ヒト胎児腎臓由来HEK293T株を採用する。定法でαシヌクレイン発現プラスミドを導入させ、免疫細胞化学、免疫蛍光染色、電子顕微鏡観察を行い、映像解析を行う。mPTP活性(開口)と膜電位ΔΨmを測定する。ΔΨm測定にはJC-1 (5,5’,6,6’-tetrachloro-1,1’,3,3’-tetraethylbenzimidazolcarbocyanine iodide)を用いる。映像解析にはNanoScope III Dimension 3000 series BioScope (Molecular Imaging)を用いる。ミトコンドリアからCytochrome cが放出される可能性があり、InnoCyte Flow Cytometric Cytochrome C Release Kit (Calbiochem)を用いて解析する。さらに、モデル動物としてラットを用いた系を検討して行く。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
計画研究内容は分子生物学、生化学、細胞培養、免疫細胞化学、電子顕微鏡観察等、分子レベルから細胞レベルの試料を用いて、多様な実験手法を駆使して遂行されるべき内容であり、対応する消耗品類を用いる。また、研究代表者は2001年10月11日付で北京首都医科大学客座教授・中日神経変性病研究聯合実験室室長(Co-Director)を兼任している。この共同研究室には正教授5人、助教授1人、研究員5人、技官5人、そして多数の大学院生が参加している。これらの海外共同研究者との緊密な共同研究の結果、研究成果を得て今日に至っている。今後もこの共同研究を継続する事が双方にとって重要であり、研究室員との相互連絡を効率良くするためにも複数(年3、4回、各1、2週間)の研究打合せに要する外国旅費経費を計上する。
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Research Products
(3 results)
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[Journal Article] Demonstration of three dopamine molecules bound to alopha-synuclein: Implication of oligomerization at the initial stage2012
Author(s)
S Shimotakahara, Y Shiroyama, T Fujimoto, M Akai, T Onoue, H Seki, S Kado, T Machinami, Y Shibusawa, K Ueda, M Tashiro
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Journal Title
J. Biophysical Chem.
Volume: 3
Pages: 149-155
DOI
Peer Reviewed