2011 Fiscal Year Research-status Report
脊髄性筋萎縮症原因蛋白質SMNの神経細胞における機能の解析
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23500431
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
鹿島 剛 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (30459622)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | Spinal Muscular Atrophy / Survival Motor Neuron / RNA binding protein / hnRNP A2 / hnRNP A1 / translational control / Transcription |
Research Abstract |
これまでの我々の研究結果より、SMN1/2遺伝子は前駆体mRNAのスプライシングに於いてhnRNP A1/A2により制御を受け(既に報告済み)、更に細胞質内に輸送された後の翻訳の過程にてhnRNP A2による直接の分子間の相互作用によって翻訳調整を受けていることが解った。この結果は現在論文としてまとめており、まとまり次第科学雑誌に投稿予定である。この事実は、このSMN遺伝子の既知の制御機構(転写における制御とスプライシングにおける制御)とは異なり、この遺伝子の生体内での調節機構を理解する上で重要なファクターと成り、今後のSMA(Spinal Muscular Atrophy)の治療法の開発に於いて、治療法の新たなターゲットと成り得る事を示唆されている。更には、我々のグループは、SMN1/2のmRNAが断片的に細胞の末梢に局在している事実をつかんでおり(まだ未発表のデータ)、このSMNのmRNAの局在が神経細胞、特にモーターニューロンに顕著に観察されそしてSMAモデルマウスでこの現象が障害が起きていれば、今後のSMA研究そしてSMAの病態におけるSMNのmRNAの動態がクローズアップされることであろうと考えられる。神経末梢、殊に樹状突起や軸索突起の末端へ輸送され、その局部にて翻訳調整を受けているmRNAが幾つか見つかっているが、我々の発見であるSMNのmRNAがRNA結合タンパク質によって翻訳制御を受けている事実が前述の現象を裏付けている考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
これまでの研究の結果を仕上げる段階で、細部を詰めて結果を出していた為にそちらに労力の殆どを費やしてしまった結果、新規の研究課題に対する立ち上げが遅くなってしまった。更に昨年の研究費交付決定の遅れが私個人の研究に於いて数か月のブランクを来してしまった事も、大きな遅延の原因になったことは否定できない。当初の研究課題に於いてマウスを使用する動物実験計画を大学に提出して認可を得ていたが、多くの研究施設ではラットを初代神経細胞に使う方法が一般的で、事実私が初代神経細胞培養技術を習得した慶応大学の岡野研でもラットを用いたプロトコールを使っており、今回の研究計画に於いて使う動物の変更を余儀なくされた。昨年度の当初より新たにラットを使った動物実験計画書を本大学に提出し、その後数か月の審査期間を得て、認可を得たことも、全体の研究計画信仰の遅れに響いていたと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
なるべく早くに新規の研究計画に集中するために、これまでの研究成果、"hnRNP A2を介したSMNの翻訳制御"を速やかに論文にまとめて発表する。初期調整したラットの初代神経細胞を使って当初の平成23年度の研究予定の殆どと、平成24年度の前半の研究計画までを今年度中に遂行することを絶対目標にしていきたい。まず、Tubulin依存性のKinesinタンパク質のどのIsoformがSMNの軸索輸送を担っているかを、RNAi技法を使って同定する。その後、このKinesinのIsoformをGSTタグを付加したタンパク質をIn Vitroで精製し、ラットの脊髄組織または大脳組織に含まれるSMNを含んだRNA顆粒を幾つかのカラムを使って精製し、その構成因子を質量分析器を使って解析し、同定する。各々の実験作業をできる限りスピードアップし、全体的な研究計画を先に推進したいと考えている。できる事なら、平成24年の研究計画の後半に予定されているSMNを含むRNA顆粒の解析まで到達することを努力目標(絶対目標ではない)にしたいと考えている。前年度に発生した32,602円の残金は、前年度の予算を使用していった上での端数(全予算の2%)であり、来年度の研究費の一部として使用する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度の研究費は、データの正確性や再現性を得る為に初代神経細胞へのRNAi処理やプラスミッドのトランスフェクションなどの実験を繰り返し行わなければならない。その為に、これらの実験で消費される試薬やその材料等への多量の出費は、そのコスト上からも全経費の大きな割合を献上せざるを得ない。初代神経細胞培養を用いた実験を継続的また繰り返し実行することをに可能にするために、多くのラットを費やさなければならず、更に脊髄・大脳などの細胞抽出液の生成等に多くの匹数を費やすために、ラットのコロニーの形成維持のためのかなりの経費を献上することはやむを得ない。
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