2011 Fiscal Year Research-status Report
筋萎縮性側索硬化症感受性遺伝子の単離と発症機構の解明
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23500433
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
飯田 有俊 独立行政法人理化学研究所, 骨関節疾患研究チーム, 上級研究員 (10277585)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 筋萎縮性側索硬化症 / ALS / ゲノム解析 |
Research Abstract |
筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis; ALS)は、進行性の神経変性疾患である。しかし、現在まで病因論は不明で、有効な治療法が全くない。本研究では、(1) 最近、ゲノム解析より単離した新規ALS易罹患性遺伝子ZNF512Bについて、その機能解析を行ない、ALS病態カスケードを明らかにすること、(2) ゲノムワイド関連解析(GWAS)を行い、新たな孤発性ALSの遺伝的素因(疾患感受性遺伝子)を明らかにすることを目的とした。 (1) ZNF512Bの結合タンパクの検索を行った。タンパクの機能、局在等より、18種の候補タンパクを候補として解析した。解析したタンパクのうち、2種類のタンパクが、ZNF512Bと結合することを見出した。 (2) 一方、GWASは、61万SNPを用いたGWASへと規模を拡大し、包括的にゲノムを探索している。全例についてSNP型を判定した後、データの品質管理を行った(Hardy-Weinberg平衡検定値、call rate、マイナーアレル頻度等)。同時に各集団内における階層化を調べるために、QQプロットの作成や主成分分析等を行った。 その他、最近、本邦で発見された新規ALS原因遺伝子OPTNについて、その遺伝子領域のゲノム構造異常を同定し、新規変異機構を見出した。710例のALSを解析し、5例の欠失を発見し、切断点を同定した。OPTNの欠失は、全てAlu mediated recombinationによって生じていた。 以上、本研究は、易罹患性遺伝子の分子遺伝学的解析により、ALSの発症に関連する分子群、及びその疾患発症への molecular pathwayを解明することが可能になる。これらの知見は、ALSに対する論理的な新たな治療戦略を生み出すと共に、画期的な治療薬創出へのseedを提供する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ZNF512B結合タンパクは、現在まで2種類同定した。ひとつは、神経細胞保護シグナル経路に関係する分子で、もうひとつは核内転写制御にかかわる分子であった。今後は、更なる結合タンパクや病態カスケードの下流遺伝子について、解析を行うとともに、ゲノム構造解析を重点的に行う。 GWAS研究に関しては、共同研究機関との連携により、解析可能な検体数が1000検体を越えた。61万SNPを用いたGWAS解析を行い、ALS候補SNPを発見している。当該領域について、詳細なSNP地図を構築し、最も関連のあるSNPを同定する。さらに検体数を追加して、メタ解析を行う。 以上のように、結合タンパク、ALS易罹患性候SNPをそれぞれ見出した。次年度は、これらの分子について、詳細なゲノム解析、タンパク機能解析を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) ZNF512B結合タンパクの同定と病態カスケードの探索 平成23年度の計画に引き続き、ZNF512Bの機能解析を行う。ZNF512Bが神経保護シグナル経路に関与するという可能性から、 (1) 培養細胞を用いた強制発現系における細胞内シグナル伝達経路の解析を行う。(2) 結合タンパクを同定し、候補遺伝子アプローチよりゲノム解析する。すなわち、当該遺伝子領域の構造解析、SNP地図の構築、変異検索、関連解析を行い、ALSの発症に関与するか否かを調べる。(2) GWAS候補領域についてすべてのSNP、またはSNP以外の多型が発見されたならば、それらの中からTag SNPを選抜する。Tag SNPを用いて再び関連解析を行い、最もALSと関連について機能解析を行う。方法は、ルシフェラーゼアッセイ等を用いてSNPの違いによるアレル間の差を測定する。例えば、プロモーター領域に存在する場合は、感受性SNPと非感受性SNPの両アレル間での転写能の違いを測定する。また、イントロン領域にある場合には、遺伝子のプロモーター領域を連結したレポータープラスミドに当該SNPを含むイントロン領域をクローニングする。同様に培養細胞にトランスフェクションして数日間培養後、エンハンサー活性を測定する。 (3)その他、候補遺伝子の解析。現在まで報告のあるALS原因遺伝子、易罹患性遺伝子について、日本人検体を用いた変異検索、およびメタ解析を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
(1) ZNF512B結合タンパクの同定と病態カスケードの探索 結合タンパクの解析で質量分析及び、抗体作成を行う。機能解析においては、細胞培養培地、血清、シャーレ、または解析試薬として、遺伝子導入試薬、遺伝子精製試薬、ルシフェラーゼ測定試薬、関連タンパク抗体等を購入する。(2) GWAS 本研究では、大量のSNPタイピング、シークエンスを行う。SNPタイピングはPCRをベースとした方法であるためPCR酵素、専用プラスチックチューブ、SNPプローブを使用する。1遺伝子あたり20プローブ(平均的なタグSNP数と、再シークエンスにより発見したSNP数を基に試算)、5遺伝子/年を調べる。シークエンスの費用は、5遺伝子/年調べた場合、1遺伝子あたりシークエンスするためのPCRアンプリコン領域が平均10領域、12人の症例をシークエンスする。
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[Journal Article] A functional variant in ZNF512B is associated with susceptibility to amyotrophic lateral sclerosis in Japanese.2011
Author(s)
Iida A, Takahashi A, Kubo M, Saito S, Hosono N, Ohnishi Y, Kiyotani K, Mushiroda T, Nakajima M, Ozaki K, et al.
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Journal Title
Human Molecular Genetics
Volume: 20
Pages: 3684-3692
DOI
Peer Reviewed
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