2011 Fiscal Year Research-status Report
アミロイドβ前駆体C99をターゲットとしたアルツハイマー病治療戦略の開発
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23500445
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
西村 正樹 滋賀医科大学, 分子神経科学研究センター, 准教授 (40322739)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松尾 明典 滋賀医科大学, 分子神経科学研究センター, 助教 (20324585)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 神経疾患 / アルツハイマー病 / βアミロイド / トランスジェニック・マウス / 認知症 |
Research Abstract |
アルツハイマー病の分子病態において、決定的な役割を果たすのはアミロイドβ(Aβ)ペプチドである。Aβの産生を制御する治療ストラテジーとして、本課題ではAβ産生の直前の前駆体であるAPP-C99をターゲットとするアプローチの開拓を目的とする。独自に同定しているタンパク質ACDPは、Aβ分泌の抑制する、γセクレターゼ複合体と結合する、γセクレターゼ活性を阻害しない、APP-C99の分解を促進するなどの特徴を示す。本課題では、ACDPの作用メカニズムの解析およびACDPトランスジェニック・マウスを用いた解析を通し、副作用のない治療法の実現を目指した研究を進める。 本年度の実績のうち、ACDPの構造機能連関解析からはAβ産生抑制活性の発現には全長タンパク質が必要であることが明らかとなった。また、直接の作用分子はγセクレターゼ複合体であることが示唆された。γセクレターゼ複合体に相互作用しながら、γセクレターゼ活性は阻害せず、Aβ産生を抑制するメカニズムは治療法を考慮する上で重要であり、今後解析を進める必要がある。 ACDPの発現メカニズムについては、TGF-β受容体刺激による翻訳促進が認められるとする論文報告が参考になった。この培養細胞による知見が個体レベルの脳内において同様に認められるか否かは今後の検討を要する。一方で、TGF-β受容体活性化は脳内Aβ産生を抑制すると報告されており、ACDPはこれを仲介する分子として働く可能性がある点で重要であり、今後やはりマウスなど哺乳類個体での検討を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、ほぼ計画通り以下を進めた。1. ACDPの構造機能連関解析・受容体探索 (1)ACDP はN末端切断を受け分泌される。アミノ酸配列上、Aβ産生抑制活性を示すために必要最小限の領域を同定するため、部分欠失変異体を作成して検討した。結果、あらゆる欠失はタンパク質としての安定性を失い、その活性を喪失させた。従って、活性には分泌型全長タンパク質が必要であると考えられた。 (2)ACDPは細胞膜表面において、γセクレターゼ複合体と結合する。一方、Presenilinノックアウト細胞ではAPP-C99増加活性は示さず、γセクレターゼ阻害剤存在下ではAPP-C99が増加したことから、セクレターゼ活性の有無に拘わらず、γセクレターゼ複合体の存在が必要と考えられた。2. ACDP発現調節メカニズムに関する検討 ACDPは翻訳段階において発現誘導を受けることが報告された。すなわち、TGF-β刺激はhnRNP-E1リン酸化を促進し、ACDP mRNAの3'末端にあるコンセンサス・モチーフを介して翻訳を促進する。TGF-β受容体活性化はAβ産生を抑制すると報告されており、ACDPはこれを仲介する可能性がある。 年度計画の通り、ACDPの活性と一次構造との関連性の解明、作用分子の同定、発現メカニズムに関する解析を進めることが出来た。一部、論文報告による知見が参考になったが、今後、脳における再現性について確認する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
【平成24年度計画】 マウス個体での機能解析として、ACDPトランスジェニック(Tg)・マウスの作出と解析を予定する。神経細胞優位に発現するマウスprionプロモーターを用いたACDP-Tgマウスを作出し、アルツハイマー病モデルであるAPP-Tgマウスとの掛け合わせを行うことにより、アルツハイマー病の病理所見への効果、記憶学習障害への効果をそれぞれ病理学的、行動学的に評価する。【平成25年度計画】 ACDP-TgとAPP-Tgマウスの掛け合わせによる本症の病理所見や記憶学習障害へのACDP過剰発現の効果の検討を継続する。また、薬剤開発に向けたリード化合物検索として、ACDP様活性を示す化合物を細胞内APP-CTFレベルと分泌Aβレベルの変化を指標にスクリーニングする。ヒット化合物については生理活性・毒性を詳細に検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
トランスジェニック・マウスの飼育費、新たなマウスの購入費、および免疫組織化学的解析、生化学的解析のための試薬、プラスティック器具、抗体、学内共同機器使用料などがおもな使途となる。また、成果発表のための学会参加に関わる旅費および参加費への使用を計画している。
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Research Products
(9 results)