2011 Fiscal Year Research-status Report
摂食うつ関連G蛋白質共役型受容体の分子解剖による新展開
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23500449
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
斎藤 祐見子 広島大学, 大学院総合科学研究科, 教授 (00215568)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | GPCR / 摂食 / うつ不安 / 構造活性相関 |
Research Abstract |
メラニン凝集ホルモン受容体MCHR1はG蛋白質結合型受容体に属し、「摂食」「うつ不安」の両方に関与する極めて興味深い分子であり、重要な創薬標的でもある。昨年度は『MCHが結合した受容体がどのような構造変化をおこし、その結果、どのような分子メカニズムでG蛋白質を選択して活性化するか』という構造ダイナミクス、さらに膜特殊構造への局在機構の一端を明らかにした。(1)MCHR1は通常Gq とGi/oに共役する。しかし我々が見出した機能獲得変異体F318KはGq選択的に活性化することを見出した。さらに活性型ロドプシンを鋳型とすることで3次元モデルを作成し、K318と水素結合する部位は細胞内第一ループD79, W73であることを示した。さらにF318KにおいてGqとの共役能が強化する事実は「GqのC末端にあるN357とMCHR1のK318-W73-D79が相互作用する」ことで解釈が可能であることを示した。(2)ラットMCHR1はGq, Gi/oと共役するが、キンギョMCHR1はGqとのみ共役する。そこで両者のアミノ酸配列を比較して20種類の変異体を作成し、機能アッセイを行うことにより、Gi/o結合に関与する部位をかなり狭めることができた。(3)Xenopus tropicalisから4種類のMCH受容体1a, 1b, 2a, 2bのクローニングを行った。さらにそれぞれの局在を調べ、哺乳類培養細胞に発現させることにより、それぞれのG蛋白質共役性を決定した。(4)MCHR1は神経細胞1次繊毛に局在する。1次繊毛という場におけるMCHR1の機能を調べ、その特異なセンシング機構の本体について追求するために、1次繊毛含有するヒト網膜由来不死化細胞RPE1を入手し、MCHR1が「選択的」に1次繊毛に発現するために必要なアミノ酸残基(細胞内第3ループ)を特定することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
上述のように並行して行った4つの研究計画について大きな進展が見られた。研究計画書に記載した計画以上の成果が得られたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
以下の計画により、MCHR1の分子解剖をさらに進展させ、同時にXenopus tropicalisや1次繊毛システムを活用することにより、MCH-MCH受容体系の生理的意義解明に着手する。(1)MCHR1におけるGタンパク質選択性:細胞内第3ループと第5膜貫通部位に存在する6つのアミノ酸残基がGi/o偏向性に関与することが判明した。今後は他の細胞内ループにおける変異と組み合わせることで、より完全にGi/o選択性となるものを同定する。また、選択性変動に伴う受容体の他の機能(アレスチン依存性インターナリゼーション能やERK活性)についても多面的に検討を行う。(2)Xenopus tropicalis由来の4種類のMCH受容体についてその生理的意義(摂食行動、皮膚色変化)を解析する。さらにカエル由来の培養細胞を用いてシグナル系の測定も行い、生理的環境下ではどのような情報系が関与するか調べる。(3)1次繊毛上のMCHR1の生理的意義についての実験はH24年半ばより開始する。MCHR1を特異的に認識する抗体により、免疫組織染色で海馬・側座核などの1次繊毛にMCHR1が局在することを確認した。そこで、生理的環境により1次繊毛におけるMCHR1動態がダイナミックに対応して変動するかを解析する。遺伝的肥満動物(ob/ob, Zucker)を用いることで、摂食状態における各脳領域における1次繊毛の形態、MCHR1の発現箇所を免疫組織化学により解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費のほとんどは消耗品(血清、トランスフェクション試薬、アッセイ試薬、培養用プラスチック製品)として使用する。さらに成果発表のための旅費を計上している。
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Research Products
(21 results)