2012 Fiscal Year Research-status Report
摂食うつ関連G蛋白質共役型受容体の分子解剖による新展開
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23500449
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
斎藤 祐見子 広島大学, 総合科学研究科, 教授 (00215568)
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Keywords | GPCR / 摂食 / うつ不安 / 構造活性相関 |
Research Abstract |
メラニン凝集ホルモン受容体MCHR1はG蛋白質結合型受容体に属し、「摂食」「うつ不安」の両方に関与する極めて興味深い分子であり、重要な創薬標的でもある。H24年度は『MCHが結合した受容体がどのような構造変化をおこし、その結果、どのような分子メカニズムでG蛋白質を選択して活性化するか』という構造ダイナミクス、さらに膜特殊構造への局在機構の一端を明らかにした。①MCHR1は通常Gq とGi/oに共役する。しかし我々が見出したF318KはGq選択的に活性化することを見出した。さらにマルチアライメントと3次元モデルを併用し、K318とGi/oとの相互作用部位を予測した。②ラットMCHR1はGq, Gi/oと共役するが、マツカワやキンギョMCHR1はGqとのみ共役する。そこで両者のアミノ酸配列を比較して30種類の変異体を作成し、機能アッセイを行うことにより、Gi/o偏向性に関与する部位を細胞内第2ループ及び第3ループのそれぞれ数残基まで絞り込んだ。③MCHR1と機能的に結合する蛋白質RGS8は細胞レベルの実験ではMCHR1機能を大きく抑制する。そこで、中枢特異的に発現する発現コンストラクトを作成した。④Xenopus tropicalisから4種類のMCH受容体のクローニングを行ない、それぞれ薬理学的特徴を解析した。さらに皮膚を用いた実験により、MCH受容体がヘテロ2量体として機能する可能性を見出した。⑤MCHR1は神経細胞1次繊毛に局在する。1次繊毛という場における特異なセンシング機構の本体について追求するために、1次繊毛を含有するヒト網膜由来細胞RPE1を入手し、MCHR1が「選択的」に1次繊毛に発現するために必要なアミノ酸(細胞内第3ループ)を2残基特定した。さらにアストロサイト初代培養系においてもこのアミノ酸残基がMCHRの1次繊毛局在にとって重要であることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画書に記載した昨年度計画のin vitro実験はほとんど達成した。しかし、MCHR1を特異的に認識するとされる抗体について精査したところ、特異抗体ではないことを見出した(MCHR1ノックアウトマウスでも組織染色で陽性となる)。そこで、現在、免疫組織化学の目的に耐える抗体を検索中である。
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Strategy for Future Research Activity |
以下の計画により、MCHR1のG蛋白質選択性機構をさらに進展させ、同時にMCHR1結合蛋白質の遺伝子改変動物を作成を継続する。(1)MCHR1におけるG蛋白質選択性:機能アッセイによりGi/o偏向性に関与するアミノ酸残基が判明したため、次はG蛋白質-GSTループ融合蛋白質間のプルダウンアッセイなどを用いてより詳しく作用機序を解析する。さらに3次元モデルを構築し、受容体とG蛋白質間の相互作用について予測を行なう。(2)Xenopus tropicalis由来の4種類のMCH受容体についてカエル由来の培養細胞を用いてシグナル系の測定を行い、関与する情報系を調べる。(3)抗MCHR1抗体を用いて、生理的環境により1次繊毛におけるMCHR1動態がダイナミックに対応して変動するかを解析する。遺伝的肥満動物(ob/ob, Zucker)を用いることで、摂食状態における各脳領域における1次繊毛の形態、MCHR1の発現箇所を免疫組織化学により解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費のほとんどは消耗品(血清、トランスフェクション試薬、アッセイ試薬、培養用プラスチック製品)として使用する。さらに成果発表のための旅費を計上している。
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Research Products
(18 results)