2012 Fiscal Year Research-status Report
グルタミン酸輸送体結合タンパク質欠損マウスにおける記憶力・運動能力向上の機序
Project/Area Number |
23500454
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
青山 晃治 帝京大学, 医学部, 准教授 (00420943)
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Keywords | GTRAP3-18 / EAAC1 / グルタチオン |
Research Abstract |
グルタチオン(GSH)は、グルタミン酸、システイン、およびグリシンから成るトリペプチドで、抗酸化作用をはじめ、酸化還元反応、神経伝達、酵素活性、分化・増殖、およびアポトーシスなどに関わる重要な細胞内物質である。神経細胞におけるGSH産生の律速段階は、グルタミン酸トランスポーターEAAC1を介する細胞内へのシステインの取り込みである。本研究では、EAAC1を抑制的に制御している小胞体蛋白質GTRAP3-18をノックアウト(KO)したマウスを用いて、第一に、神経細胞におけるGSH産生調節機構について検討した。今回、我々が作成したGTRAP3-18KOマウスにおいては、脳組織における形態学的な異常やグリオーシス、および神経変性所見は認められなかった。また、野生型(WT)マウスと比較しKOマウスにおいては脳内システイン及びGSH量の有意な増加を認めた。一方、WTマウスと比較しKOマウス脳においてはEAAC1以外のシステイントランスポーターの発現に変化は認められなかった。脳組織染色の結果では、WTマウスと比較しKOマウスにおいてはグリア細胞におけるGSH蛍光染色像には変化は認められなかったが、神経細胞においてはGSH蛍光染色像のシグナル増強と酸化ストレスに対する抵抗性を認めた。これらの結果からKOマウスにおける脳内GSH量の増加は神経細胞に由来することが示された。次に、KOマウスにおける記憶力・運動学習能力について行動学的な解析を行った。空間認知・学習機能評価のための水迷路試験や運動学習機能評価のためのロタロッド試験を用いた検討では、WTマウスと比較しKOマウスは有意に優れた空間認知・学習能力および運動学習機能を持つことが示唆された。これらの行動学的な変化がEAAC1の機能促進によるものか否かについては引き続き検討していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ノックアウトマウスを用いた動物実験では、行動学的、組織学的、および生化学的手法を用いて当初の研究計画を十分に遂行することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
GTRAP3-18 KOマウスにおける行動学的解析結果をふまえ、学習機能におけるGTRAP3-18の役割についてさらに検討を進めていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
GTRAP3-18KOマウスの維持・管理およびgenotyping費用、免疫染色に必要な各種抗体・マーカー、ELISA測定キットなどの購入費用および、実験用動物(C57BL/6マウス)、その他の試薬や器具類の購入費用として1,300,000円/年を要する。
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