2013 Fiscal Year Annual Research Report
グルタミン酸輸送体結合タンパク質欠損マウスにおける記憶力・運動能力向上の機序
Project/Area Number |
23500454
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
青山 晃治 帝京大学, 医学部, 准教授 (00420943)
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Keywords | グルタチオン / EAAC1 / GTRAP3-18 / 神経変性疾患 |
Research Abstract |
グルタチオン(GSH)は、神経細胞内において抗酸化作用を有する重要な神経保護物質であると同時に各種蛋白質機能の維持、細胞内シグナル伝達、および細胞の分化・増殖において重要な役割を担っているトリペプチドである。パーキンソン病やアルツハイマー病などの神経変性疾患では脳内GSH量の低下が認められており、神経細胞内GSH産生調節機構の解明は臨床的にも重要である。神経細胞におけるGSH産生の律速段階は、神経型グルタミン酸トランスポーターEAAC1による細胞内へのシステインの取り込みに依存している。また、EAAC1の細胞膜上への発現は、小胞体蛋白質であるGTRAP3-18により抑制的に制御されていることから、神経細胞内のGSH産生はGTRAP3-18に制御されていると考えられる。本研究では、GTRAP3-18 ノックアウト(KO)マウスを作製し、神経変性に及ぼすEAAC1とGTRAP3-18によるGSH産生調節機構を明らかにすることを目的とした。我々が作成したGTRAP3-18KOマウスの脳サンプルを用いた検討では、野生型(WT)マウスと比較しKOマウスにおいてEAAC1の細胞膜上への発現増加と脳内システイン及びGSH量の有意な増加を認めた。一方で、その他のシステイントランスポーターの発現に変化はみられなかった。また、免疫組織染色の結果から、KOマウスにおける脳内GSH量の増加は神経細胞に由来することが示された。脳組織スライスカルチャーモデルを用いた検討では、KOマウスは酸化ストレスに抵抗性を示した。また、水迷路試験やロタロッド試験を用いた認知行動学的な検討では、WTマウスと比較しKOマウスが有意に優れた学習能力を持つことが示唆された。以上の結果から、GTRAP3-18を抑制的に制御することにより、内在的、かつ神経細胞選択的にGSH産生を促進することが明らかとなった。
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