2012 Fiscal Year Research-status Report
抗グルタミン酸受容体抗体が関与する脳炎発症機序の解明
Project/Area Number |
23500455
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Research Institution | Kanazawa Medical University |
Principal Investigator |
田中 惠子 金沢医科大学, 医学部, 教授 (30217020)
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Keywords | グルタミン酸受容体 / NMDA受容体 / long term potentiation / 病態モデル / 海馬細胞 / 記銘力障害 |
Research Abstract |
イオンチャネル型グルタミン酸受容体 (GluR)は記憶・学習のメカニズムに深く関わる。本研究では,NMDA型GluR に対する自己抗体を有する急性脳炎の主症状の一つが記銘力障害であることから,当該疾患に生じる抗NMDA受容体抗体の神経症状への関与を明らかし、その発症機序を解明することを目的としている。23-24年度にかけての研究成果を列挙する。 ・ 自己免疫性脳炎の診断を目的に,抗NMDA受容体抗体検査法を確立した申請者の元に多くの検体が集積し,抗体検査を行った。この結果,我が国における当該疾患の発生頻度の概略とその臨床的特徴を明らかにすることができた。 ・ 抗体陽性例の髄液を、マウスの海馬スライス標本に作用させ、海馬CA1領域で誘導したlong term potentiation (LTP) が直接阻害されることを報告した。この結果は,自己免疫性中枢神経疾患患者に生じた自己抗体が直接神経症候に関わること示唆したはじめての報告となった。 ・ 本抗体が海馬細胞の形態に及ぼす影響を検討した。培養ラット海馬細胞に患者の自己抗体を反応させると、NMDA受容体が細胞内にendocytosisされること,その後,細胞の樹状突起形成が対照よりも活性化することを示した。この過程に海馬細胞内のどのような分子が関与するかを明らかにするため,microarrayおよびreal-time PCRにてmRNAの発現パターンを検討し,28個の遺伝子発現に変動が見られることを明らかにした。さらにパスウェイ解析などを加えてこれらの変動パターンの意義を検討している。 ・ マウス脳内に患者由来の抗体を投与し,神経症候,各種パラメーターを用いた行動解析,脳組織の形態学的観察を行い,各種対照でのデータを蓄積中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
23年度に、NMDA受容体脳炎患者の自己抗体がNMDA受容体機能を直接的に傷害すること、その機能傷害は、抗体が海馬細胞のNMDA受容体に結合して受容体が内在化することにより生じることが確認できたため、24年度はマウス脳内へ抗体を投与することによるvivoでの疾患モデルを作成した。本症患者の抗体陽性髄液を脳内投与したマウスは、本症に特徴的な症候を呈することを確認できたことから、24年度の目標をほぼ達成できた。さらに神経組織内での免疫動態、分子動態の解析に着手することができており、ほぼ予定通りに研究計画が進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
マウスの脳内に抗NMDA受容体抗体陽性患者髄液を投与することで作成した疾患モデルについて,詳細な行動解析および組織学的,免疫学的検討を加える。本抗体を生じない他の炎症性神経疾患および皮神経疾患患者由来の髄液など各種対照についても同様の手法で検討を加え,抗体陽性群との比較検討を行う。これにより,NMDA受容体脳炎に生じる自己抗体の病態への関与について明らかにし,病態に基づいた治療法を策定する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額に計上した研究費は、NMDA受容体脳炎モデルについてのさらなる検討のための動物の購入、脳内注入システムに関わる物品の購入,免疫組織染色に使用する各種抗体の購入に使用予定である。
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Research Products
(43 results)
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[Journal Article] Details of treatment-related difficulties in men with anti-N-Methy-D-Aspartate receptor encephalitis2013
Author(s)
Sakamoto H, Hirano M, Samukawa M, Ueno S, Maekura S, Fujimura H, Kuwahara M, Hamada Y, Isono C, Tanaka K, Kusunoki S, Nakamura Y
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Journal Title
Eur Neurol
Volume: 69
Pages: 21-26
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Anti-NMDA-receptor antibody detected in encephalitis, schizophrenia, and narcolepsy with psychotic features2012
Author(s)
K Tsutsui, T Kanbayashi, K Tanaka, S Boku, W Ito, J Tokunaga, A Mori, Y Hishikawa, T Shimizu, S Nishino
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Journal Title
BMC Psychiatry
Volume: 12
Pages: 37
DOI
Peer Reviewed
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