2012 Fiscal Year Research-status Report
海馬シナプスのメタ可塑性におけるプロテインキナーゼPKNの役割
Project/Area Number |
23500461
|
Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
安田 浩樹 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (60294071)
|
Keywords | PKN1 / シナプス可塑性 / 神経発達 / ストレス / 代謝型グルタミン酸受容体 |
Research Abstract |
私たちはタンパク質キナーゼprotein kinase N1a (PKN1a)ノックアウトマウス海馬において幼若期に、同じ異シナプス性長期抑圧がシナプス後性に生じることを見いだした。 ① この長期抑圧は5型代謝型グルタミン酸受容体(mGluR5)依存性である。② PKNはシナプス後部で作用しており、亢進した長期抑圧はシナプス後性の発現を示し、エンドサイトーシスが関与している、③ KOマウスにおいては、長期抑圧が亢進している生後0-2週の間は、野生型マウスに比べてシナプス伝達が未発達で、サイレントシナプスが多い。またPKN1a KOマウスでは長期抑圧誘発刺激によってサイレントシナプスがより多く発現する。 以上が明らかになった。幼若海馬においてはPKN1がシナプス長期抑圧を抑制することによって、シナプス発達を制御していることがわかった。 また研究代表者は、うつ状態の原因の一つ、ストレスが海馬歯状回顆粒細胞に与える影響を研究している。数日間の強制水泳により顆粒細胞が、代謝型グルタミン酸受容体依存性に興奮性が亢進することを見いだした。さらに、PKN1aノックアウトマウスでは、ストレスのない状態でも興奮性が高く飽和しており、ストレス負荷による興奮性上昇がないことから、PKN1aは正常マウスにおいて、代謝型グルタミン酸受容体機能を抑制しているが、ストレスによってその抑制が解除されることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
メタ可塑性については、先行研究である、PKNの異シナプス性長期抑圧に関する研究のデータ取得を今現在も行っている上に、本研究課題に必要なPKNマウスの交配が予定通り行われないために、若干遅れ気味である。ただ、PKNがストレス負荷による、海馬歯状回顆粒細胞の興奮性上昇に関与しているという、予想外の結果が得られたのは、良い点であると考える。 また、現在本研究課題まとめた論文投稿中で、エディターのリクエストしている実験を遂行しているが、完成までにあと数ヶ月かかる見込みである。
|
Strategy for Future Research Activity |
はじめに、PKN1による代謝型グルタミン酸受容体機能制御のメカニズムを明らかにする。現在注目しているのは、神経細胞やグリアに存在するグルタミン酸トランスポーターである。グルタミン酸トランスポーター阻害剤TBOAによって、海馬歯状回下流細胞の興奮性が上昇し、飽和効果によりストレスによる興奮性上昇が消失することを見いだした。今後は、TBOAによって、代謝型グルタミン酸受容体依存性異シナプス性長期抑圧が誘発されるかを検討し、生化学的にグルタミン酸トランスポーターがPKN1によってリン酸化されるかを検討する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度には、「今後の推進方策」で述べた実験データ取得を最優先課題とし、PKN1a KOおよび、PKN1 KIマウスコロニーの維持費用、イオン型および代謝型グルタミン酸受容体阻害剤等、薬剤の購入に予算を充当する予定である。また、論文発表するための 英文校正費および論文掲載費を計上している。
|
Research Products
(3 results)