2013 Fiscal Year Research-status Report
海馬シナプスのメタ可塑性におけるプロテインキナーゼPKNの役割
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23500461
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
安田 浩樹 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (60294071)
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Keywords | PKN1 / シナプス可塑性 / 代謝型グルタミン酸受容体 / グルタミン酸トランスポーター / ストレス |
Research Abstract |
プロテインキナーゼPKN1の中枢神経系における機能を、PKN1aノックアウトマウスを用いて解析したところ、①海馬CA1において代謝型グルタミン酸受容体依存性シナプス伝達長期抑圧が亢進し、周囲のシナプスにも広がる、②海馬歯状回において代謝型グルタミン酸受容体依存性興奮が亢進し、ストレス負荷と同じ効果があった。これらのフェノタイプはグルタミン酸トランスポーター阻害剤で再現され、また神経型トランスポーター excitatory amino acid transporter 3 (EAAT3)活性が、キナーゼ活性のないPKN1強制発現によって低下する。PKN1は正常脳においては神経にのみ発現していることから、PKN1は神経型グルタミン酸受容体を活性化することによってシナプス間隙や細胞外グルタミン酸濃度を低下させ、主に代謝型グルタミン酸受容体機能を正常化していると考えられる。現在はPKN1が神経型グルタミン酸トランスポーターを活性化するメカニズムを検索している。プロテインキナーゼC(PKC)がEAAT3の細胞表面での発現を増強していると報告されているので、PKN1も同様の効果があるか否か、培養神経細胞を用いて生化学的に検索している。また海馬歯状回の活動亢進は、動物の不安を減少させる効果があると報告されているが、PKN1aノックアウトマウスは、オープンフィールドテストおよび水迷路テストにおいて、野生型マウスに比べて中心にいる傾向があった。PKN1機能低下によって海馬歯状回活動が上昇したことによると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
群馬大学動物実験施設の移転に伴ってマウスコロニーを移動した際に、交配がしばらく途絶えてしまい、実験用のマウスが得られなくなったために、実験計画がやや遅延している。
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Strategy for Future Research Activity |
上述の通り現在は、PKN1が神経型グルタミン酸トランスポーターを活性化するメカニズムを検索している。プロテインキナーゼC(PKC)がEAAT3の細胞表面での発現を増強していると報告されているので、PKN1も同様の効果があるか否か、培養神経細胞を用いて生化学的に検索している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究課題では、PKN1の中枢神経系における機能をPKN1aノックアウトマウスを用いて解析した。海馬CA1領域において、代謝型グルタミン酸受容体依存性シナプス伝達長期抑圧が亢進し周囲のシナプスにも広がること、および長期抑圧の亢進によってサイレントシナプスが増加することを見いだし、論文を投稿した。その際に、この現象の分子メカニズムと生理学的意義等を追加することを雑誌編集者に要求されて、このに点について新たに実験する必要が生じたため、予定を変更して本研究課題の予算を、年度を延長して使用することにした。また前述の通り、群馬大学医学部動物実験施設の移転に伴って、マウスコロニー交配に遅延が生じ、予定していた実験がこなせなくなったことも要因である。 本年度には、PKN1が神経型グルタミン酸トランスポーターを活性化するメカニズムを検索している。プロテインキナーゼC(PKC)がEAAT3の細胞表面での発現を増強していると報告されているので、PKN1も同様の効果があるか否か、培養神経細胞を用いて生化学的に検索している。そのために、おもに培養細胞作成、および生化学的実験用の消耗品購入に予算を充てる計画である。
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