2013 Fiscal Year Annual Research Report
神経栄養因子を介する中脳ドパミン神経活動調節の異常に関与するチャネル機構の解明
Project/Area Number |
23500464
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
難波 寿明 新潟大学, 脳研究所, 助教 (90332650)
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Keywords | ドパミン / 神経栄養因子 / ニューレグリン / 上皮成長因子 / スパイク発火特性 / 動物モデル / 統合失調症 |
Research Abstract |
上皮成長因子(EGF)やニューレグリン(NRG)は、中脳ドパミン神経に対する栄養因子として作用する。またこれら因子シグナルの異常は、中枢発達障害を引き起こす要因の一つとして、統合失調症の病因との関連性が提唱されている。この仮説を検証するため本研究で用いる新生仔期EGF/NRG投与動物が動物モデルとして樹立され、その発症や病態に関わる中枢機構を解明する上で有用なものとなっている。 本研究を通して、当該動物モデルのドパミン神経の生理特性をスライス実験により解析した。その結果、EGF投与動物のドパミン神経の発火特性に対する影響が見出されている。即ちEGF投与は、スパイク後過分極を構成する外向き電流成分を低下させることで、スパイク間隔を短縮させる作用を持つことが明らかになった。この作用はドパミン放出に促進的なバースト活動の形成に寄与するものと考えられる。またNRG投与マウスでは最終年度の計画実施により、ドパミン神経への抑制シナプス入力並びにGABA感受性の低下が見出された。このようなシナプス特性への影響もまた興奮性の増強に寄与するものと考えられる。 両因子投与動物の麻酔下での神経活動を記録することで、黒質緻密部でのバースト活動の亢進が見出された。またEGF投与の影響はより著明であり、腹側被蓋野でも活動が亢進していた。最終年度には、EGF遺伝子を過剰発現するトランスジェニックマウスを用いて解析し、同様に黒質緻密部でのバースト活動の亢進が認められた。 このように当該動物モデルでは、新生仔期の栄養因子刺激を介してチャネル発現あるいはシナプスレベルでの生理特性変化が引き起こされ、ドパミン放出に促進的な活動異常が生じているものと推察される。このような活動変化はドパミン伝達異常の一つとして、精神刺激薬感受性亢進などモデル動物の行動特性と関連付けられる可能性がある。
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