2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23500467
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
三浦 健一郎 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20362535)
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Keywords | 運動視覚 / 眼球運動 / 生理学 / 脳・神経 / 神経科学 |
Research Abstract |
視覚像中に複数の動き要素がある場合には、要素の性質や要素間の関係に応じて二つ以上の動きが同時に見える場合や一つの動きのみが見える場合がある。また、眼の動き等の運動出力においては複数の要素が等しく寄与する場合や、統合あるいは選択された一つの動きのみが寄与する場合がある。本研究では、ヒトと動物を対象とした行動実験とサルを対象とした神経活動記録実験を行い、異なる視知覚や眼球運動の基となる多重運動の脳内表現およびその情報処理機構の解明を目指している。ヒト及びモデル動物を対象とした行動実験では、互いに異なる空間周波数を持つ二つの正弦波運動縞で構成される視覚刺激(二重正弦波運動縞)を見ている時の運動視知覚と眼球運動反応の性質、網膜の視覚運動処理様式、複数の運動要素の空間的統合様式、視野内に複数の運動情報が重畳する場合の運動情報選択の時間経過が明らかになった。サル大脳皮質MT/MST野の神経活動記録実験からは、MT野とMST野の個々の神経細胞が動画像の時空間周波数成分を検出すること、二重正弦波運動縞で構成される視覚刺激を用いた実験から、二つの要素のコントラストの違いに応じて選択された運動情報あるいは複数の運動情報が同時にMT/MST野の活動として表現されること、複数の正弦波運動縞で構成される運動錯視刺激を用いた実験から、MT野とMST野の神経応答特性で錯視現象や眼球運動出力を説明できることがわかった。以上の結果は多重運動の脳内表現と眼球運動出力の関係を示す重要な所見である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
3頭のサルの大脳皮質の運動視覚関連領域(MT野とMST野)から単一神経細胞記録を行い、その分析を行った。視覚運動に対するこれらの領野の神経細胞の重要な性質として、個々の神経細胞の時空間周波数特性、領野間の相違点、集団的活動と眼球運動出力との関係が明らかとなった。また、互いに異なる空間周波数を持つ二つの正弦波運動縞で構成される視覚刺激(二重正弦波運動縞)を用いた実験では、二つの要素のコントラストの違いに応じて選択された運動情報あるいは複数の運動情報が同時に表現されることが明らかとなった。さらに、複数の正弦波運動縞で構成される運動錯視刺激を用いた実験から、MT野とMST野のこれらの性質が視知覚現象や眼球運動出力を説明できる可能性があることも示された。また、ヒト及びモデル動物を対象とした行動実験では、多重正弦波運動縞に対する眼球運動反応、網膜の視覚運動処理と眼球運動との関係、複数の正弦波運動縞刺激の空間的統合様式、視野内に二つの運動情報が重畳する場合の運動情報選択のダイナミクス、二重正弦波運動縞を見ている時の運動視知覚と眼球運動反応の類似点と相違点を示す所見を得ている。また、構成的研究において、多重運動の解析と脳内表現から最終的に行動出力に至るまでの情報処理プロセスのモデル化を進めている。以上、順調に進展しており当初想定していた以上の成果が出てきている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、網膜の視覚情報処理と眼球運動の関係を調べる実験、運動視知覚と眼球運動反応の類似点と相違点を調べる実験を進め、構成的研究に必要なデータ取得を行う。さらに新データと既取得データの分析及び構成的研究を進め、大脳皮質MT/MST野の神経活動と運動視知覚及び眼球運動出力を計算機シミュレーションで再現することで多重運動の情報処理と脳内表現及びそれが実際に使われる時のメカニズムを理解する計画である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
大脳皮質MT/MST野の神経活動の分析を行った結果、これまでに調べられていなかった視覚応答特性の新たな側面がわかってきた。多重運動の脳内表現を理解するためにはこれらの性質の分析を優先して行う必要があったため、構成的研究の一部とその成果報告および論文誌投稿を次年度に行うこととした。 次年度使用額は、構成的研究とそれに必要なデータを得るために行う追加実験のための物品費、研究成果報告のための旅費、論文誌投稿のための費用として使用する計画である。
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Research Products
(9 results)